お金の価値の皮膚感覚
結婚相手に求める条件として、具体的な年収額を – それが妥当か否かは別として - 挙げる人はいますが、お金の使い方について具体的な金額を挙げる人はいるでしょうか。例えば、「年間○百万円以内で生活している人」と条件付けをする人にはなかなかお目にかかれません。
年収5千万円の人でも、1年で5千万円を使うような生活を送っている人。年収が少なくても、やり繰りして、少しずつでも貯蓄出来ている人。金銭感覚は十人十色です。私は、前者と後者の良し悪しを意見するつもりはありません。
むしろ、お金を湯水のように使うことに慣れた人が、爪に火を点すような節約生活に馴染むことは容易なことでは無いと思いますし、節約生活に慣れた人が、金使いの荒い人と一緒に生活をすればストレスが溜まる一方なのではないかと思うのです。
長い間、体に染みついたお金の使い方やその人にとってのお金の価値が、付き合う相手とある程度合っていないと、どちらかの、あるいは双方の不満が爆発しかねません。
お金の価値観は、年間の生活費をいくらにするとか、月々の食費をいくらに抑えると言った定量的な制限を設ける以前の、もっとふわっとした皮膚感覚のようなものなのでしょうが、性格の一致と同等に重要なポイントだと考えます。
お金使いのメリハリ
お金に関してだけ言うと、私の場合、大学生の頃が谷底でしたので、もうあの頃には戻りたくないと言う思いです。恐らく、無駄遣いをしてはいけないと言う強迫観念のようなものが身についたのもこの頃です。
妻は妻で、就職して親元を離れてから、少ない給料でやり繰りしていたので、お金に関してはシビアな目を持っています。
ここまで読まれた方は、私たち夫婦は金銭感覚が同じだと思われるでしょう。しかし、どんなに似たような金銭感覚を持っているように見えても、お金の使い方の“メリハリ”を一緒にするのは至難の業です。要は、引き締めるところと、緩めるところ、その勘所が一致しなければ、やはり諍いを避けることは出来ないのです。
私たち夫婦の場合、例えば、冠婚葬祭の費用で食い違いが生じます。ご祝儀やお香典の額。包むお金の額は付き合い方や相場観もありますが、妻はどちらかと言うと、全てに“手厚く”したい派。私はその逆。両者の感覚が毎度倍近く違うので、いつも言い合いになってしまいます。
そんな感じに、金銭感覚が同じように見えても、お金をどこにどのように使うかと言う皮膚感覚の溝を埋めることは難しいのだと思います。
生活レベルを決めるもの
家族の趣味や習い事は、食費や光熱費のように生きて行くために必要な出費ではありませんが、当の本人からすれば、生活の一部であり、それに係るお金は必要経費なのです。コストカットが目的になってしまい、ささやかな楽しみまで削いでしまっては、人生が苦行になってしまいます。
では、自分にあった生活レベルはどのように決めれば良いのか。答えは一つではありませんが、大切なことは、持続可能性だと思います。無理な目標設定は早晩破綻します。
私たち夫婦の場合、若い頃は給料も安かったので、日々の生活を何とかやり繰りすることで精一杯。必要な生活費と二人にとっての生活の潤いを守るために、車無しの生活スタイルに変えたことで、何とか給料の一部を貯蓄に回せるようになりました。そこからは試行錯誤の連続でした。生活費の見直しのために二人で家計簿とにらめっこして過ごす夜もありました。
貯蓄の方法は過去の記事ですでに触れたので、繰り返しは避けますが、振り返ってみると、今私が安心感を得られているのは、目的どおりにお金が貯まっているとか、給料が増えたとかでは無く、若い頃からの生活レベルを保つことが出来ていると言う自信です。
自分の“足る”を知り、満足感が得られる生活スタイルを構築できれば、収入が増えたからと言って浪費に走ることもありません。習慣を改めることは簡単なことではありませんが、浪費癖も同じです。収入が減ったから浪費を止める、とはなかなか行かないのです。私の両親が正にそうでした。かつて羽振りの良かった時のお金の使い方が体から抜けませんでした。
浪費は禁物だけど、潤いは保つ。家計のバランスを取り続けるには、お金の価値に対する感覚をあるべき場所に維持することが必要なのですが、実際の数字を確認し続けるのが一番手っ取り早い方法だと考えます。それの方法は、毎月の家計簿チェックです。当たり前と言えば当たり前の話です。
当然、新婚時代と比べて、子どもが増え、教育費が嵩む時期もあったので、その時々でお金の出方は変わりました。しかし、生活費のベースの部分で、お金の価値に関する皮膚感覚は昔と変わりません。それを毎月確認することで、生活レベルを維持することが出来ているのだと思います。
