和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

人並みの生活

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当ては外れるもの

私が大学生の頃にはバブルの終わりが近づいていましたが、それでも、アルバイト先の上司や先輩の羽振りの良さを目の当たりにした私は、就職するとこんなに良い生活を送れるのかと、大きな期待を抱いていました。

 

ちょうどその時分、父親の事業は傾き始めていました。私は、贅沢な生活では無くても、浮き沈みの無い安定した暮らしを送れれば良いと考えていました。就職先は給料の多寡では無く、安定した企業か否かを基準に決めました。

 

就職して、先輩や上司との会話で窺える暮らしぶりから、この会社に勤めていればこの程度の生活が出来るのだと思うようになりました。結婚して子供を2~3人持ち、郊外に家を構えて、退職までローンを払い続ける - 私の頭に刷り込まれた“人並みの生活”でした。

 

最初の上司は、長距離通勤と退職金でようやく完済出来る住宅ローンが飲み会の自虐ネタでした。しかし、その表情には悲壮なものは無く、むしろ終身雇用制度に対する安心感が滲み出ていました。生活にはお金がかかるけれども、会社に勤めている限り毎年給料は上がるしボーナスも出る。上司が抱いている安心感に、私は何の疑いも感じませんでした。

 

それからほどなくして、バブル崩壊の本当の影響が出始めました。景気の悪化は私の勤め先においても他人事ではありませんでした。元来、景気動向に左右されにくい業種でしたが、“先行きが不透明”と言う訳の分からない理由で定期昇給が凍結されました。

 

私が入社した頃に期待していた給料の上昇カーブは見事に外れました。入社以来30年、ボーナスはほぼ毎年減額支給が続いています。もっとも、ボーナスがもらえるだけでも御の字ではありますが、これは、妻と結婚当初に作ったキャッシュフロー表の“悲観ケース”の想定にかなり寄った数字になっています。

 

バブル時代の期待は当てにならない。給与は今まで通りには上がらない。結果として、あの頃の妻の“読み”は当たりました。宝くじが当たることを期待して資金計画を立てる人はいないでしょうが、給料も然りで、上がり続けることを期待して将来設計を立てるのは楽観過ぎると思います。

 

不安を安心に

キャッシュフロー表については以前も記事にしました。妻と私の生涯収入の使い道と優先順位を決めておくことで、衝動的な浪費を抑えることが目的でした。

lambamirstan.hatenablog.com

 

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収入に限りがあると言うことは、買えるものにも限りがあると言うことです。不要なことにお金を使ってしまうと、本当に必要なものに回せるお金が無くなってしまうこともあります。逆に、将来の不安に囚われ過ぎて脇目も振らず吝嗇家への道進んでしまえば、暮らしに潤いが無くなってしまいます。

 

財布の紐は緩め過ぎても締め過ぎてもいけません。自分たちにとって本当に必要なものは何か、解消すべき不安は何か。それぞれにどれだけのお金を配分できるのか。得られるお金を何にどれだけ費やせるかを考えておくことが大事だと思います。

 

全ての不安がお金で解決できるわけではありませんが、“お金で解決できる不安”だと分かっているものは、その準備をしておくことで、不安が安心に変わります。

 

私たちにとっての不安は、突然の失業と老後生活でした。

 

バブル崩壊後、絶対に潰れないと信じられていた金融機関の中から倒産する銀行が出始めました。リストラを推し進める会社も増えてきました。バラ色の(?)新婚生活を取り巻く環境は灰色で、妻も私も将来に漠然とした不安を覚えていました。

 

そんな中で作成したキャッシュフロー表では、住宅購入資金や子どもの教育資金の“つもり貯金”と並行して失業と老後のための資金も蓄えることを考えました。もちろん、20代の薄給の身。思いどおりに貯蓄は出来ませんでしたが、若い時から始めることによる“チリツモ効果”は案外馬鹿に出来ません。むしろ、貯蓄の開始時期が早ければそれだけ家計を逼迫させずに、緩く長く積立を続けることにより、時間を見方につけることが出来ます。

 

人並みの生活

入社当初に望んでいた人並みの生活は、単に、無いものねだりに過ぎませんでした。上司や先輩の生活ぶりから、自分もいつかは、そうなりたいと思っていただけで、それが自分の本当に欲しいものなのかまで熟考したものではありませんでした。

 

妻と話をする中で、希望する生き方を描けるようになりましたが、それは、誰かの後追いや真似では無く、自分たちにとって必要か否かを判断基準としたものです。

 

そうするのが“普通”とか“当たり前”と思い込んでいるものの中には、自分にとっては必要無いものが潜んでいることがあります。自分にとって必要なもの、本当に欲しいものが分かれば、お金の使い方にメリハリをつけることが出来ます。私はそれが生きたお金の使い方だと思っています。