生活

大人になると言うこと

大人の特権 中学に上がったばかりの頃だったと思います。当時はまだ父親の事業も上手く行っていました。父は付き合いで飲み歩くことはほとんど無く、仕事が終わって帰宅すると、ほぼ毎日晩酌をしていました。タバコを燻らせながら水割りを啜る父を見て、私は…

自家製マティーニの話

カクテル実験室 北米に駐在していた頃の話です。ある日、上の娘の高校進学を祝って家族で外食をしました。高校進学と言っても、あちらでは高校も義務教育なので、公立の学校では入試はありません。学区内の決められた学校に進んだだけなので、本人の努力を労…

サラリーマンの垢

気持ちの切り替え 早いもので、私が介護休業に入ってからもうすぐ1か月となります。専業主夫業と妻の介助に専念する一方で、仕事から完全に切り離された生活は、当初、どこか落ち着かない奇妙な感覚が抜けませんでした。 これまでの約30年間は、会社の業務の…

元気な証拠

リハビリ月間 妻は、3月終わりに左乳房摘出の手術を受けて以来、週1回病院に通っています。病理検査の結果、今後の治療方針が決まるそうですが、それまでの間は、抗がん剤の投与もストップしているため、体調が良いようです。 元来、じっとしていられない性…

続 結婚と損得勘定

パートナーと言う道具 私の職場の元先輩の話です。その元先輩、O子さんは妹のM子さんと共にうちの会社に勤めていました。私が入社3年目から4年目で、O子さんはちょうど30歳、M子さんは20代半ばだったと記憶しています。 妹のM子さんは、学生時代の彼氏と結婚…

厚意と感謝

気遣いの輪 電車やバスで、お年寄りや体の不自由な方に席を譲った経験がある人は多いと思います。逆に、具合が悪い時に席を譲ってもらい助けられた経験をお持ちの人もいるでしょう。 見ず知らずの人に手を差し伸べる時、無意識のうちに自分を相手の立場に置…

多様化の裏側

多様化と潜伏する差別 性別、人種、思想などあらゆる領域において、異なる属性を有する人同士がお互いを尊重し、平等に扱われる世の中。私は来たるべき多様化社会を“なんとなく”そのような感じで捉えています。おそらく、これまで生きてきた中で、自分の属性…

自粛生活 シーズン2

頬に受ける風 妻の看病のため、私は今週から約2か月間の介護休業に入りました。妻の予後は良好で、ひと安心しています。妻は退院後もリンパ液を排出するためのドレインパックをつけたままですが、主治医の先生からは、できるだけ体を動かすよう言われている…

白秋の坂道

老いてゆく自分 青春の反対語は白秋と言うそうです。青春は長い坂を登るようだと歌にありましたが、白秋は長い坂をゆっくり下って行くことに例えられるのでしょう。 50代を過ぎた頃からでしょうか、自分の記憶力の衰えを覚え始めるようになりました。仕事で…

夫婦喧嘩と味噌汁の味

性格の不一致とは? 「夫婦喧嘩は犬も食わない」と言うとおり、先人も他所の夫婦の諍い事に口を出すことの馬鹿馬鹿しさを分かっていたのでしょう。私はかつて、知り合いの夫婦が揉めていた際に仲裁役を買って出たことがありましたが、そんな余計なお世話など…

感謝する喜び (3)

やりたいことリスト 妻は元々心配性で、物事を悪い方に考えがちです。病気の宣告からこれまで、先々のことについていろいろ考えていたはずです。妻が、病気への不安や自分の死について口に出さないのは、それによって私や娘たちとの関係性が、“家族同士”から…

感謝する喜び (2)

宣告 妻は毎年人間ドックを受診しているのですが、昨春のドックで左の乳房に大きな影が見つかり再検査を受けました。そして、7月の連休直前のある日、私と妻は住まいからほど近い総合病院を訪れました。 再検査の結果、妻は乳がんと診断されました。レントゲ…

感謝する喜び (1)

畳コーナー 家のリビングの片隅に3畳ほどの畳コーナーがあります。和室は要らないけれど、フローリングだけでは味気無く、ほんの少しだけ畳を敷いたスペースが欲しい。家を建てる際に妻のそんな要望を形にしたのが畳コーナーでした。 つい半年前まで、私はそ…

子どもの嘘と大人の嘘

嘘の雪玉 私たちは、物心がつく頃から嘘を吐いてはいけないと繰り返し教え込まれてきました。しかし、ほとんどの人はいけないことなのだと知りながら、それでも嘘を吐いてしまいます。 子どもの頃の私は酷いもので、毎日のように嘘を吐いていました。宿題を…

森さんの失言  見える恥、見えない恥 – 補遺 –

前回の記事を脱稿した直後に、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長の失言騒ぎが起こりました。知らない方はいないと思いますので、詳細をここで繰り返すことは控えますが、あの方は、国内外から非難を浴びて、ようやく事の重大さは認識したものの、…

胡蝶の夢 (2)

記憶装置の悪戯 私たちの脳は不思議なもので、大切な思い出として取っておきたいことは簡単に忘れてしまう一方で、嫌な思い出はなかなか忘れようとしないことがあります。一刻も早く忘れてしまいたい記憶が、不意に、しかも何度も脳裡に浮かび上がって来る、…

胡蝶の夢 (1)

写真とビデオと記憶の整理 誰でも、日々仕事や家事に追われていると、落ち着いて物事を考えるゆとりが持てないと言うことがあると思います。 私の務め先では、通勤時間が減った分生活にゆとりが出来たと言う者がいる反面、在宅勤務で仕事とプライベートの境…

依存と共存 夫婦のあり方

新しい人格 私たち夫婦にとっての結婚は、当初、“何となく”と言うものでした。もちろん、いい加減なつもりで付き合っていたわけでは無く、結婚は真剣に考えた結果の上での選択でした。しかし、当時の私にとって、それは同棲生活の延長であり、同棲との違いは…

危機感の喪失 見えないコロナ禍収束

コロナはただの風邪か 昨年、渋谷駅前などで「クラスターフェス」なる抗議デモが何度が開催され、ニュースにもなりました。彼らは、新型コロナをただの風邪だとして、マスク着用やPCR検査を“必要無いもの”と主張しました。 コロナ禍以前でも、風邪気味にも拘…

多様性の向こう側

夫婦の役割 私たち夫婦は、結婚当初共働きでした。その後、私の海外駐在が決まり、時同じくして妻は妊娠したため仕事を辞め、専業主婦となりました。妻が再び仕事を見つけ働き始めたのは、私が2度目の駐在を終えて帰国した後、今から約5年前のことでした。 …

当たり前の有難み

日々淡々と ここ最近の年末年始は、家族4人で私の母親の家で過ごすことにしていました。母も毎年孫たちの顔を見るのを楽しみにしていたのですが、この新年は残念ながらそれが叶いませんでした。それでも、元日に母に電話をすると、受話器の向こう側からは思…

失ったものと大切なもの

失ったものを忘れるために 大切なのに、その大切さに気がつかない存在を空気に例えることがあります。いつも傍にいることが当たり前になっていて、いざ失いそうになった時に、初めてその大切さを知るのです。 私の部下に既婚者の女性社員がいます。以前、別…

長い長い予定表 (3)

理想の家族 私の知人で郊外の一戸建てに住んでいた人がいました。Fさんは私の大学の大先輩で、就職活動中のOB訪問でお世話になりました。結局、その会社は2次面接で落とされてしまったのですが、Fさんにお礼の電話をすると、「残念会をやろう」とご自宅へ招…

長い長い予定表 (2)

一生で稼げるお金 一週間分の食材を蓄えた冷蔵庫があります。途中で食材の補充は出来ません。いくらお腹が空いているからと言って、月曜日に冷蔵庫を空にしてしまっては、残りの6日間を過ごすことは出来ません。また、何が起こるか分からないからと言って、…

長い長い予定表 (1)

遠くを見る目 会社の仕事、とりわけ新しいプロジェクトの投資評価を行う場合、計画が想定どおりに進んだケースの他、カギとなる要素が想定し得る最悪の状況になった場合 – リスクケース – も考慮します。リスクケースは、“悪い状況が重なった場合に生じる損…

愛情の報酬

幸せの押し売り 私の勤め先の後輩に、去る6月に結婚を予定していた者がおりました。コロナ禍の影響で結婚式は延期と伝えられていましたが、先々月、電話で結婚を取り止めるとの連絡を受けました。 奥さんの親御さんが職を失ってしまうかどうかの瀬戸際らしく…

必要なのか、欲望なのか

幸せの証 過去に何度か父親のことに触れた記事を書きました。祖父から仕事を引き継いだ父は、家族だけで営んでいた町工場を、従業員十数名を雇うまでに成長させました。 しかし、今考えると、それは私の父に商才があったからでは無く、たまたま高度成長の波…

パートナーに求めるもの

見た目の若さか、真の健康か 見た目や体力の衰え。生き物である私たちにとって、加齢とともに訪れる衰えは避けては通れません。まだまだ若いと思いながらも、やがて、しわや白髪が増え、おなかの周りの贅肉が気になり始めます。 私も数年前までは、20代の、…

気楽さの中の幸せ

塩おにぎりが好き 加齢とともに嗜好が変わるのは、その年齢にならないと分からないものです。若い頃は脂っこいものや濃い味付けのものが好きだった私も、揚げ物を食べた翌朝に、胸やけで目を覚ますようになってからは、あっさりとしたものを好むようになりま…

最良の一日と最悪な一日

一日をリセットする時間と空間 「今日も良い一日だった」と思いながら布団に潜り込めたらどんなに幸せでしょう。 数年前までの私は、その日一日を振り返ることをしませんでした。若い時に比べて、家族と向き合う時間は作れるようにはなりましたが、それでも…