
会社勤めをしていた頃の最後の数年は、極力資料などの印刷は控えるようにとの社内方針が進められていましたが、私は社内文書や契約書のドラフトを印刷して、そこにコメントや修正案文を手書きしていました。ページを自分の手で手繰って書き込む作業をしないと上手く考えがまとまらず、退職まで古い習慣を捨てることが出来ませんでした。
そのため、私の右手中指にはペンだこが残り続けていました。自分の中で、ペンだこを“育てる”のは仕事をしている証でもありました。
仕事を離れて約三か月。手書きする機会が激減どころかほとんどなくなって、長年の相棒だったペンだこもうっすらと痕跡を残すだけになってしまいました。これからはペンや万年筆を持ち続ける必要もないので、もう少しするとその痕跡も消えてなくなります。
今、少し心配しているのは“字忘れ”です。現役時代、仕事で使用する言葉はスラスラと書ける一方で、読めるけれども書けない漢字や英単語が多いことが気になっていましたが、仕事を離れて使わなくなれば、今まで書けていた言葉たちも私の頭の中から消えてしまうのだと考えるとちょっと寂しい気がします。
その点、私の妻は筆まめで、知り合いに旅行先でのお土産を渡す時にも一筆箋に一言添えることを忘れません。家計簿兼日誌も手書き。新聞記事などで知らない言葉を見つけると紙面の余白で“練習”しているようです。妻は字を書くことも含めて言葉を使うのが好きなのだと思います。知らない漢字はすぐに調べて、小学生のように何度も書いて覚えるようにしているみたいで、それは結婚当初から変わりません。
字忘れが心配なら、私も妻を見習って手書きの習慣を身に付けないといけないですね。