和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

手遅れ

どこの部署でも上司と部下問題は存在するのでしょうが、それでも普通は異動後の最初の数か月はいわゆる“ハネムーン期間”で、お互いの腹の内を探りつつも表面上は上手く行っているように見えるものです。

 

ところが、私の課はそれがありませんでした。課長としては、「言いたいことがあれば遠慮なくどうぞ」ということだったのでしょうが、最初の課のミーティングでは、その言葉とは裏腹に、課長は部下からの意見を取り入れることはありませんでした。部下が全員、無益な議論を嫌って、それ以上の口出しをしなかったというだけの話で、だれも課長の意見に納得していたわけではありませんでした。

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職場の雰囲気なんて、たった一人の人間によって簡単に良くも悪くもなるものです。私の所属する課もその例に漏れません。

前課長と課員が作り上げてきたものを自分のスタイルに合わせて変えようとしたことで、新課長と部下との間には早々に溝が生まれました。

 

管理職の仕事で欠かせないのは、部下の意欲を引き出して十分な能力を発揮する場を提供するところなのですが、今の職場の雰囲気はその真逆に向かっているように見えます。表面的な衝突はありませんが、その影響はすでに表れ始めました。

 

先日、私が部長と課長に退職することを告げた後、課長が部長に愚痴をこぼしたそうです。曰く、私の退職は自分に対しての当てつけではないかと。

 

そのことを部長から聞かされた私でしたが、課長の、邪推を通り越した自意識過剰な妄想に反論する気にもなりませんでした。

 

部長は私の呆れ顔に畳み込むように、実は今月中堅社員が退職するのだと言いました。彼は人手が足りない中、自分にかかる負荷に文句は言いながらも、仕事を回し続けてくれた功労者です。

 

部長が中堅社員の退職を私に漏らしたということは、すでに慰留にも失敗し本人の決断を覆すことが無理だと判断したからなのでしょう。今月も残すところあと十日。業務の引継ぎをするにせよ後任の手当てなどできるはずもなく、中堅社員の抱えていた仕事は宙に浮くことになります。

 

部が大変なことになるのは想像するまでもありませんが、それと私の退職とは別の話。課長に対しての当てつけというのは全くの見当違いですが、課長の見立ては私と中堅社員が結託しているのではないかという見立てのようです。

 

そこまで話を聞いて、私は部長の次の一言を予想出来ました。そして、これ以上部長を落胆させないために、私は自分の退職日の先送りはありえないと念押しし、課長交代を進言しました。さもなければ、さらに退職者が増える可能性もあることも付け加えました。

 

もはや手遅れなのだと思います。前の課長が退職した時点で部下の士気は間違いなく下がりました。それに輪をかけて中堅社員が退職するとなれば、課は求心力を失います。