和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

義兄の暴走(1)

妻の悩み

今年は家族四人にとって最高の年になると思っていましたが、一年を通じて何のトラブルもなく平穏に過ぎていくことなど期待しない方が良いのかもしれません。

自分自身の悩みではなくとも、親兄弟のいざこざに巻き込まれて自分の悩み事になってしまうこともあります。心配性の妻は、とりわけその嫌いがあります。

十余りも歳の離れた姉と二人の兄は、妻をずっと子ども扱いしてきました。妻からしても姉兄とは距離がありました。

妻が冗談半分に、「結婚して子どもが生まれて、ようやく兄弟姉妹の仲間入りができた」と言うくらい、それまでは兄姉との関係性は希薄で、実家にまつわる諸々のことについても妻は蚊帳の外に置かれていました。

妻は蚊帳の外にいたからこそ、今までは見なくていいものを見ずにいられました。しかし、兄弟姉妹の仲間入りをしたのを境に、妻は兄姉の諍いに板挟みとなり、悩みを抱え続けるようになりました。

私は義理の兄姉のうわべの姿しか知りません。妻は兄弟姉妹の間で起こっていること全てを私に明かしているわけではなく、私も根掘り葉掘り聞き出そうとはしませんでした。

 

義兄からの手紙

今月に入って、上の義兄から長文の手紙が妻に送られてきました。妻は、身内の恥だからと手紙を私に見せようとはしませんでしたが、それでも自分で抱えきれないものを吐き出したかったのだと思います。義兄からの手紙の内容を掻い摘んで私に話してくれました。

義兄夫婦の一人息子が家を出て年上の女性と同棲していること。その件は義兄夫婦の関係も悪くして、別居した連れ合いから離婚を切り出されていること。そこで義兄は自分の兄弟姉妹も巻き込んで自分の連れ合いとの関係修復を考えているようでした。

黙って聞いていた私は、話の筋は理解するものの、違和感を覚えたのですが、それは妻に言い出すことが出来ませんでした。同時に義兄からの手紙に何が書かれているのか興味が湧きました。

それは、たった今妻が話してくれた内容なのでしょうが、手紙に書かれている文章から義兄が何を思っているのかを知りたい欲求に駆られました。その一方で、それを知ったからといって私にできることなどあるはずもなく、余計なことに首を突っ込もうとするのを抑える自分もいました。(続く)