和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

払い込み満了

独身時代の私はお金のことには無頓着でした。毎月の給料から奨学金を返済したら、あとは自分のお小遣い。翌月の給料日までにはほとんどお金を使い切っていました。

妻と結婚することが決まり、お互いの銀行通帳を見せ合った時、妻の口から小さな悲鳴が洩れたのを今でも覚えています。四桁の残高。それが私の全財産でした。妻曰く、この瞬間に家計の管理は自分でやるしかないと思ったそうです。

結婚後、私の給料は妻の管理下に置かれました。生命保険、医療保険、それに個人年金にも入らされ、毎月少ないながらも一定額は貯蓄に回すようになりました。

我が家のキャッシュフロー表を作って、これから先どれだけのお金が必要になりそうなのかを試算した時、その目標額は当時の私にとっては気の遠くなるものでしたが、結婚当初に明確な目標を定めたことで、妻と私はお金についてはオープンに話ができる関係になりました。

しがない会社員の生涯収入などたかが知れていますが、叶えたい目標を絞り込むこととお金の配分をよく考えることでなんとやっていけるものだということが、この歳になってわが身を振り返ってみて分かりました。

終身保険の払い込みが先月で満了となったので、そんなことが頭に浮かびました。妻との結婚は、お金に関して言えばマイナスからのスタートだったので、目先の生活と将来への危機感が夫婦の結束を強めたのだとすれば、結果として良いタイミングで結婚できたのだと思います。「お金が貯まってから」などと考えていたら、妻と結婚することもなかったかもしれません。