和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

必要なものに使えるお金 (2)

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息苦しくない節約生活

前回の記事のとおり、私たちは、キャッシュフロー表を基に、見込みの生涯収入からランニングコストを差し引いたお金を優先度の高い使い道から振り分けました。住居のための費用や、まだ生まれていない子供のための教育費の“つもり貯金”を始めようと張り切ったものの、結婚当初は毎月の生活費を工面するだけで精一杯の状態。給与天引きの財形貯蓄がつもり貯金でしたが、最初は本当に微々たる額でした。

 

そして、手取りの給料でやり繰りしようと考えたものの、東京の社宅で暮らし始めた頃は、妻が結婚前に貯めていた貯金を切り崩しながらの生活が続きました。

 

数か月後には妻が派遣社員として再就職したので世帯収入は増えることになりましたが、バブル崩壊後の不透明な時期でもあり、働き続けられる保証もなかったため、妻の給料は手をつけないことを前提に生活することにしましたが、最初の2年足らずの間は、私一人の給料では生活を回すことが出来ませんでした。

 

毎月二人で生活するのにいくらお金がかかるのか。やってみなければ分かりません。独り暮らしの時には、ギリギリまで切り詰めて生活していましたが、それを妻に強要することは出来なかったので、まずは、無駄遣いしないことだけを念頭に、どんな節約生活ができるかを試してみました。

 

数か月間、家計簿をつけていると費目ごとの傾向が見えてきます。食材や日用品は、週1回のまとめ買いをすると無駄な買い物をしない分費用を抑えられることや、洗濯は風呂の残り湯を使うことは、節約のプロなら常識なのでしょうが、私たちはそんな基本的なところから試行錯誤を繰り返しました。

 

決して贅沢は出来ませんでしたが、長続きできそうな無駄のない生活。夫婦として受け入れられる生活レベルが分かると、そこから外れないように毎月家計簿の点検を行ないました。

 

また、家族が増えれば月々の生活費も変わります。その時点での私たちにとって最適な生活レベルの見直しを行ないながら、“長続きできそうな無駄のない生活”を模索し続けました。

 

生活費に関しては、例えば、奨学金の返済金を完済した後や、子どもが習い事を止めた後も、それぞれまだ返済し続けている、あるいは習い事を続けているつもりで“つもり貯金”を行なって予備費として蓄えておくような工夫をしてきました。

 

我が家の家計簿をつけるのは妻の役目でしたが、闘病生活が始まってからは、私の役目に変わりました。残念ながら、私は妻ほど几帳面では無いので、週に1回まとめて書き込んでいますが、家計簿をつけること自体が、生活費を健全に管理している意識にもつながることを再認識しました。

 

小遣いは据え置き

冒頭で触れたとおり、手取りの給料では生活費も賄えなかった新婚生活でしたが、私は会社での付き合いのための小遣いが必要でした。この点、お金には厳しい妻でしたが、元職場の雰囲気を分かっていたからでしょう、すんなりと私の“陳情”を受け入れてくれました。そして、しばらくの間、私は妻の貯金から小遣いをもらう状態が続きました。

 

物分かりの良い妻には感謝していますが、正直に言うと、これはあまり気持ちの良いものではありませんでした。上司や同僚と飲みに行っても、ふと妻に対する後ろめたさが頭を過りました。今思うと、それが妻の企みだったのかもしれません。

 

やがて、自分の手取りから小遣いを工面できるようになりましたが、私の小遣いは今でもその当時と同じ金額のままです。デフレ日本だから小遣いが据え置きでも困らないと言うことでは無く、単に私の酒付き合いが悪くなって使う宛が減ったからです。それでも、妻が私の小遣いの減額を強く求めないのは、それが妻や娘たちのデザートの原資になっているからなのでしょう。

 

必要なものにお金を使うこと

生涯収入のパイを切り分けて行く。住居と子どもの教育費のためのつもり貯金、そして月々のランニングコスト。どれかを増やせばどれかを減らさなければならない。私たちは、家計簿を基にほぼ毎年、キャッシュフロー表の見直しを行なってきました。

 

一番厄介だったのは、入ってくるお金の方でした。こればかりは自分たちの思いどおりにはなりません。入社後の給料は、私たちが想定していたとおりには伸びませんでした。

 

バブル崩壊後、会社は何度か従業員の給与規程や退職金制度の見直しを行なってきました。会社員であれば、毎年わずかながらでも給料が上がっているだけで安心感を得られると思いますが、 - 実際、私もそうでした - 再計算した生涯年収は、私たちの期待を下回ることがほぼ確実となりました。

 

その一方で、私たちの運が良かったのは、想定よりも物価が上がらなかったことで、実際の生活費はキャッシュフロー表上のそれを下回る傾向にありました。

 

そんな調子で、物事は私たちが勝手に想定したとおりには進んでくれず、落胆したり安堵したりの繰り返しでここまで来ました。

 

結果論になってしまいますが、自分たちのキャッシュフロー表がバラ色では無かったからこそ、私たちにとって必要なものと不要なものを慎重に吟味出来たのだと考えています。また、新婚当初すぐに開始したつもり貯金は、時間を味方につけることができたと言えます。預貯金の利息はおまけ程度のものでしたが、目標到達までの準備期間は長ければ長いほど、月々の積立額と精神的な負担は軽くなります。

 

反省点は、新婚当初は自分たちの老後資金を全く想定していなかったことです。キャッシュフロー上、年金の受給額は加味していましたが、不足額は住居あるいは教育費のつもり貯金を使った後の残りで乗り切ろうと安易に考えていました。老後資金のことを真剣に考え始めたのは、家を建て、子どもの教育費についても目途がついた後の話でしたが、今思えば、若いうちに老後のことも含めて考えておいても良かったのではないかと反省しています。