和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

義兄の終活

第二の人生

定年退職後に北海道に移住した義兄は、終の棲家で第二の人生を謳歌しているようです。

 

義兄は、誰にも相談せずに遠く離れた地で老後生活を送ることを決めました。転居の事後報告を受けた義姉は弟の行動を身勝手だと怒りました。それでも、放っておけないのか、その年の夏には旅行もかねて義兄の生活ぶりを確認しに出かけています。

 

妻は、そんな姉兄の様子を少し距離を置いて窺っているようでしたが、姉の弟への接し方を見て「母親に似てきた」と、あまり好意的に捉えておらず、どちらかと言えば兄の肩を持つような口ぶりです。

 

両親亡き後、義姉は、四人の兄弟姉妹の“長”としての責任を感じているのかもしれません。しかし、義兄が身内から離れて暮らしたい理由を考えれば、私は「放っておいてあげればいいのに」と思ってしまいます。もちろん、思っていても口に出せば角が立つので沈黙を続けています。

 

義兄は、野鳥の会や地域のボランティア活動にも積極的に関わっていて、独り暮らしは侘しいものではなく、自分の時間を大切に使うための最善の方法なのでしょう。

 

終活の始まり

妻と義兄がどのくらいの頻度で連絡を取り合っているのか知りませんが、どうやらお互いに義姉には話していない、あるいは話さないことにしている秘密を共有しているようです。

 

私はそれらを根掘り葉掘り探るようなことはしませんが、秘密は誰かに打ち明けたくなるものです。少なくとも妻は自分ひとりで秘密を抱えておくことができない性格で、我慢しきれなくなると私が聞き役として呼ばれます。

 

先日妻から聞かされた“秘密”は、義兄が自分のお墓を買った話でした。樹木葬で、永代供養料のみで毎年の管理費は不要。義兄が妹に自分の死後を託すような話をしたのは、順番から言えば、一番年下の妻がその役割を担う可能性が高いのと、自分の上の姉兄にそんな話をすれば大反対されることが目に見えているからとのことでした。

 

たしかに、そんな話を持ち出せば、義姉が大騒ぎするでしょう。私は妻に、法事の時にでも兄弟姉妹でそれぞれの終活についてよく話あったらどうかとアドバイスするに留めましたが、ひと悶着あるのは間違いなさそうです。

 

私は、義兄が終活を始めたことを密かに応援したいと思ってます。