和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

親離れ 子離れ

マンション騒動

今年四十路を迎えた姪が中古のマンションを買ったのは、もう半年近くも前のことでした。妻と私はささやかな引っ越しのお祝いを届け、姪の新生活を祝福しました。

 

母親からの結婚圧力に嫌気がさして姪が独り暮らしを始めたのは、私たちが帰国した直後のこと。姪は、独り暮らしに反対を続ける親を説得しきれず、親の留守中に引っ越しを敢行しました。

 

義姉の心中を推し量ることはできませんが、遅れてやってきた“娘の反抗期”で、すぐに実家に戻ってくると考えていたのだとしたら、賃貸のアパートを引き払って持ち家を手に入れた娘の覚悟は大きなショックだと想像できます。

 

妻は姪から新居への引っ越しを口止めされています。「母親には自分から話す」との姪の言葉は、未だに実行されておらず、そのことが近い将来、必ず大きな揉め事になり、それを知っていて黙っていた妻や私も巻き添えになることが妻の気がかりになっています。

 

親離れ 子離れ

思えば、まだ小学生だった頃、姪は新婚の私たちの社宅によく遊びに来ました。姪にとって妻は歳の離れた姉のような存在です。

 

妻は「面倒くさい」と言いながらも、義姉と姪の間を取り持とうと悪戦苦闘していましたが、いつの頃からか、仲裁役を降りて、姪の見守り役に徹するようになりました。

 

最近、私が妻からよく耳にするのが、義姉が母親に似てきたという話です。親子なのだから似ていて当然と思いますが、妻が言いたかったのは身内への干渉の仕方についてでした。

 

娘への結婚圧力、義兄の生活への口出し。義姉が思い描く“かくあるべき”生き方を押し付けられそうになった姪も義兄も義姉から離れて行ってしまいました。

 

最近の義姉は、私たちの娘の結婚を心配している様子だと妻から聞かされました。そのこと自体は余計なお世話以外の何物でもないのですが、もし、義姉が自分の弟の世話や子育てを生きがいと感じていたならば、それらを失ってしまった寂しさや、その埋め合わせのための新たな張り合いを見つけようとするのも理解できる気がします。

 

家族の在り方は、それぞれが成長し、年老いていくにつれて変わっていくもの。子どもがいつまでも親の庇護下にいられないのと同様に、親も子どもをいつまでも手元に置いておくわけにもいきません。自分や家族の変化をどこかで受け入れなければ、先に進めないのだと思います。