和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

懐かしの本とビデオ

読み直しの楽しみ

起床後の夜の明けきらない時間、窓を開けると気持ちの良い空気を肌に感じます。

 

家族の寝静まっている間、洗濯機を回している時間が私の読書タイムです。以前は通勤の電車の中や就寝前が読書の時間でしたが、久しく遠ざかっていた読書を再開してから試行錯誤した結果、朝一番にページをめくる方が本の内容に集中できるような気がしています。

 

以前の記事で触れましたが、最近の私は新しい書籍を買い求めることはせず、本棚で眠っている既読の本を読み直しています。

 

手垢のつくほど何度も読み返した本は別にして、かつて楽しんだ本も時間が経つとどんな内容だったかあやふやです。そんな記憶力の無さが幸いして、再読作業は私にとってとても新鮮なものになりました。

 

本棚には私が十代の頃に手に入れたものもあり、カバーがひどく傷んでいて古本屋でも引き取ってもらえなさそうな代物もあります。

 

しかし、そんな本でも、読み進めるうちに本の内容もさることながら、当時の自分が抱いていた様々な感情を思い出すことがあり、私としては読書以上の、ちょっとした時間旅行の気分を味わうことができます。

 

父のビデオテープ

再読作業とは別に、私にはもう一つ仕掛中の“仕事”があります。先日母親の様子を見に行った際に、屋根裏収納の片づけをしました。もう、二十年あまり手付かずの状態だったのですが、少しずつでも家の中の整理を始めた方がいいのではと思い、母の了解を得て整理を始めました。

 

その中から出てきたのが、段ボール箱に無造作に投げ込まれているビデオテープでした。父の遺品のようですが、テープにはラベルシールが貼っておらず、何が録画されているのか分かりません。そのまま処分しようとすると、母から「捨てる前に中身を確認してほしい」と頼まれたものの、母の家にはVHSのテープを再生するデッキがないため、数十本のテープを箱詰めにして自宅に送りました。父の遺言ビデオでも出てくるのではないか。ふと私の頭をそんな期待が過りましたが、ドラマのようなことは現実には起こりません。

 

録画しているものは、深夜のプロレス中継、再放送されたドラマ、ドキュメンタリーなどでしたが、懐かしさも相まって、早送りで“流し見”することができず、作業は捗りません。私にとっては、もはや片づけ作業ではなく、楽しみの時間になってしまいました。

 

生前の父が録画した番組を、二十数年後に息子の私が楽しんでいるのは不思議な感じです。もしかしたら、懐かしい番組でも見て気晴らしでもせよ、というのが父の遺言なのかも知れません。