和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

独居老人の母

熱中症

連日猛暑が続くとエアコンの利いた家から外に出たくなくなります。以前は日中、家を留守にしていたので、昼間にクーラーを使うのはもったいないと思っていましたが、在宅で仕事をするようになってからは、気温がピークに差しかかるお昼前にはエアコンをオンにするのが普通になってしまいました。

 

電気代は嵩みますが、家にいながらにして熱中症になるのは馬鹿げているので、必要な出費は無理に抑えないようにしようと割り切っています。

 

この三連休は母の家の片づけなどをしてあっと言う間に過ぎてしまいました。リウマチを患いながらも独り暮らしを続けている母ですが、老いの波は確実に押し寄せています。本人はいろいろと言い訳をしますが、年々少しずつ“出来ること”が減ってきているのが分かります。

 

コロナ禍が始まる前、それまで母は、夏は扇風機、冬は灯油ストーブで一年を過ごしていましたが、私としては火の始末が心配になったことと、扇風機だけでは耐えがたい猛暑が続いたことからエアコンを取りつけました。

 

ところが、せっかくエアコンを取り付けたにも拘らず、母が熱中症で救急搬送されてしまい、原因を聞くと、エアコンの設定が“暖房”になっていたというのです。

 

今考えれば、単に母が機械音痴なだけだったのだと事情を呑み込むことができますが、当時の私は心配のあまり、母に認知症の検査を受けさせたほどでした。

 

結果は「問題無し」でしたが、老親を独りにさせておくことに私はそれまで以上の不安を覚えるようになりました。

 

くどい話

独り暮らしなので、多少掃除が行き届いていなくても誰も文句は言いませんが、時折母の家を訪れると家の散らかり具合が“進んでいる”ように感じられます。

 

家族の間では、母の様子を見に行くのを「出張」と称していますが、以前は数か月に一度だった出張が、最近では月に一度乃至二度になりました。

 

食材や日用品の買い出しと家の掃除、常備菜を何品か作ってタッパーに入れて冷凍して・・・そんなことをしていると一泊二日の出張があっという間に終わってしまいます。

 

本当はそこまでする必要はないのかもしれませんが、キッチンで料理をしているのを見ても手際は悪くなっていますし、身のこなしも衰えています。本人は「年寄り扱いするな」とは言うものの、今や誰が見ても立派な年寄りです。

 

母は会うたびに同じ昔話を繰り返し、それを私は何度も聞いたとうんざりするのが定番のやり取りになっていますが、私が、母が熱中症で病院に運び込まれたことを事あるごとに持ち出すのも、それと変わらないのだとはたと気づきました。

 

私は母に用心してもらいたくて同じ話を繰り返し、母は私に昔の思い出を忘れてほしくなくて同じ話を繰り返しているのでしょう。自分が寄る年波に勝てなくなり、ようやく母の気持ちが少しだけ理解できるようになった気がします。