和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

ストレスチェック

金属疲労

年に一回、職場でストレスチェックを行なうことになっています。各社員がアンケートに答えて“ストレス度”を診断され、スコアが悪ければ産業医との面談が待っています。

 

果たしてどれだけの社員がストレスチェックに正直に答えているのだろう - 私は素朴に疑問を感じるのでした。本音でアンケートに回答した結果、産業医から「休養を要する」などと宣告されることを望んでいる社員はほとんどいないでしょう。

 

自ら体調の異変を覚えて、会社に休職を願い出る社員がいるとは聞いたことがありません。周囲も、部下や同僚が業務に支障を来たすまでは、優しい言葉はかけてもそれ以上の働きかけをすることは滅多にありません。

 

私がこれまでに見てきた病気休職者 - 精神的なダメージを負った社員に限りますが – は、総じて意欲的で仕事にのめり込むタイプでした。中には、私が知り合ってからずっと変わらずに精力的に仕事に取り組む者もいましたが、それは例外です。

 

どれほど意欲的な社員でも、寝ても覚めても仕事のことしか考えない生活を長く続けるのは無理があります。仕事と休息のバランスを上手に取れずに金属疲労を起こしてしまう者の方が多いのです。

 

手遅れと先回り

突然、仕事のミスが増えたり、塞ぎ込むことが多くなったり、挙句に出社できなくなって、産業医の診察が行なわれる時にはすでに深刻な状態に陥っています。ストレスチェックでは問題はなく、仕事振りも精力的で組織への貢献度も申し分なくても、ほんの数週間の間に別人のようになってしまうことがあります。その予兆のようなものは近くにいる人間でも簡単に見抜くことはできないようです。

 

そんなことになるくらいなら、胃潰瘍腸炎になって入院して強制的に休養を取る方がまだ“マシ”なのでしょう。ストレスが目に見える形で表れれば、誰が見ても休養が必要だと分かるのですから。

 

目に見える症状を伴わない心のダメージほど質(たち)の悪いものはありません。周囲が気づいた時には事態はかなり進んでいて、快復までに途方もなく長い時間を要することもあります。最悪な場合は職場復帰の道を閉ざされることもあるのです。

 

逆に、傍目から見て線が細く、独りで仕事を任せるには心許ないような部下に対しては、無理をさせないように細心の注意を払い、仕事が本人にとって重荷でありそうなら、他部署への異動も考慮します。そのような社員の方が結果として戦線離脱することなく会社人生を過ごすことになります。

 

結局、ストレスチェックや見た目の頑丈さはだけでは人を見抜くことはできません。嬉々として仕事に励んでいるように見える社員でも、一皮むけば、精一杯の背伸びをして今にも崩れ落ちそうな状態の者もいるかもしれません。

 

そう考えると、上司や会社が先回りして、個々の社員の意欲に拘わらず、強制的に休息を取らせたり、仕事をセーブさせたりするなどの働きかけが必要なのだと考えます。