和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

守るべきもの

もぐらたたき

会社の中で他人の話を広めたくて仕方が無い人間は後を絶たず、「ここだけの話」と前置きのついた噂話が広まらなかった試しはありません。

                                         

私が若い頃、反りの合わなかった当時の上司は、方々で私のことを吹聴して回っていました。「言うことを聞かない」、「上司に歯向かう」のは事実でしたが、それ以外の根も葉もない噂は上司が話したことなのか、尾ひれがついて拡散したものなのか分かりません。それらをいちいち否定しても、広まった話を回収することはできません。

 

もっとも、人の噂など賞味期限のあるものなので、相手にせず放っておくに限ります。ムキになってもぐらたたきゲームに付き合ってしまえば、疲弊する自分が一番損をします。

 

私が約二か月の介護休業で仕事を離れていたことは事実ですが、介護休業の理由はごく限られた人間にしか話していませんでした。それにも拘らず、休業明けには「ここだけの話」が広まっていることを私は知りました。

 

噂話に苦しめられて仕事を続ける人の気持ちは、口の軽い人間には理解できないのでしょう。噂を広める人間も、それを聞いてほくそ笑む人間も、所詮自分とは関係のない存在です。

 

家庭の内情を広められて良い気分はしませんが、介護休業を取ったことは正当な権利の行使なので、私がそれを恥じることはありません。

 

守るべきもの

そんな噂を聞きつけて、私のところに相談にきた同年代の社員がいました。介護休業制度のことを知りたければ自分で調べるなり人事部に聞けば済む話です。なぜ私に接触してきたのか尋ねても要領を得ません。恐らく、相手は、休業したことで私が何らかの不利益を被っているのかを知りたかったのではないかと思いました。

 

家族よりも自分が可愛ければ休業など考えない方が良い – 心の声をそのまま口には出しませんでしたが、自分の都合の良いように“イイトコ取り”が出来るほど世の中は甘くありません。

 

体はひとつ。一日は二十四時間。自分がどうしても取り組みたい、取り組まなければならない問題は少なければ少ないほど良いはずなのですが、あれもこれもと問題や課題を増やしてしまっては、全てが中途半端になり、悩みは尽きないどころか膨らむ一方です。

 

結局は、自分が何を一番大切にしたいのかが分かれば自ずと答えが見えます。守るべき家族との時間が大切なのであれば、仕事を休んででも看病に専心したいと考えるのは自然で、社内での評判や風評などはどうでもよくなるものです。

 

その見極めに他人のアドバイスなど不要で、周囲からどのように見られるかは関係のないことなのです。