和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

人生ゲーム

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目指すべき高み

私が初めてCさんにお会いしたのは、2度目の海外駐在の時でした。前任者からの紹介で一緒に食事をした時から、それが初顔合わせとは思えないほど意気投合して、それ以来、十年以上のお付き合いになります。

 

当時Cさんは現地法人の一人事務所の所長でした。情報収集が主な仕事でしたが、日系企業と地元企業の双方に顔が広く、私もCさんの伝手で人脈を広げることが出来ました。

 

Cさんは、最初の奥さんと30代の頃に死別し、その後現地で日本人女性と再婚。私がCさんにお会いした時、「50代にして初めて子供を授かった」とはにかんでいたのが印象的でした。

 

私よりも先に帰国したCさんは、何度か転職された後、今はエンジニアリング会社で嘱託社員として働いています。60代半ばになっても、言葉の端々から本当に仕事を楽しんでいる様子が感じられ、私も元気のお裾分けをしてもらっています。

 

同じ業界で働いていても、Cさんは私とは畑違いのエンジニアで、常々自分の専門知識を活かして働きたいと仰っていました。何度かの転職も、おそらく自分の働き甲斐を求めてのことだったのだろうと推察します。

 

それこそが、自分の知識や経験を使いながら、なおかつさらなる高みを目指そうとするプロフェッショナルの姿なのでしょう。受け取る給料の多寡や地位とは別の次元の“高み”です。

 

Cさんを見ていて私が感心するのは、決して自分を大きく見せようとせず、そうかと言って卑下することも無い - 自然体であり続けるところです。そのため、こちらも変に肩肘を張らずに接することが出来るのです。

 

“こうありたい”自分

自分は“こうあるべき”とか“こうありたい”と言ったセルフイメージを持つのはとても大切なことですが、その到達点を誤ってしまうと、イメージと現実の狭間で自分を過大評価してしまったり、逆に過小評価、ひいては自己否定してしまったりと、ギャップの沼で苦しめられることになります。

 

多くの人は若い時にアイデンティティの危機を経験するのでしょうが、大人になってからは、セルフイメージの危機と言うものに直面することがあるのではないかと思いました。事実、私はそれに直面しました。

 

仕事に明け暮れるうちに、自分が何を目指そうとしているのかが曖昧になり、目的を見失ったまま日々の業務をこなすためだけに生きているような状態に陥ったことがありました。

 

自分は、“こうありたい”自分の姿に近づいているのだろうか、もしかしたらとんでもない見当違いをしているのではないだろうか – そんな疑問すら感じられないほど、20代後半から30代前半の私は余裕がありませんでした。

 

自分の“こうありたい”姿は、来年、再来年のことでは無く、十年後、二十年後、あるいはもっと先の人生の目標です。

 

キャリアパスの上での目標はあくまでも途中経過です。キャリアパス上のピークが、必ずしも自分の人生のピークではありません。逆の見方をすれば、キャリアパス上で谷底に転落したとしても、それはゲームオーバーを意味するものではありません。

 

ピークやゲームオーバーは、自分がそうと決めつけてしまうか否かだけの話なのですが、所謂会社人生は、学生時代よりも長く続くため、その中盤から終盤に自分の描いていたキャリアパスと相容れない状況になると、ガス欠になった車のようにピタリと動きを止めてしまう人がいます。

 

もっと良い明日

「人生ゲーム」と言うボードゲームがあります。小学校の頃、友人と何度かやったことはありましたが、当時はそれほど熱中した記憶はありませんでした。

 

今から20年近く前の話ですが、フリーマーケットで、当時まだ幼稚園児だった下の娘にせがまれて「人生ゲーム」を買わされました。それ以来、月に1~2度、週末のゲームタイムを家族で楽しむことになります。

 

たかがゲームではありますが、そこには名前のとおり人生の縮図を見ることが出来ます。ゲームのルールは今も昔もほとんど同じなのでしょうが、私としては、小学生の頃には感じなかった面白さを再発見しました。むしろ、これは大人になってから楽しむゲームなのではと思ったものでした。

 

それは、当時の私自身が行き詰っていたからなのかもしれません。もっと気楽に生きられればとの思いから、週末のボードゲームを現実逃避の手段にしていたのでしょう。

 

50代半ばに差しかかった私は、現実を受け止められるだけのゆとりも出てきました – と自分で思っています。これから先の生きがいも見出しつつあります。

 

リアルな人生では天寿を全うしたその時がゲームオーバーですが、それは自分ではいつ訪れるのかは分かりません。自分が今谷底にいたとしても、明日はもっと良い日になると考えるのが人生を楽しむコツなのではないかと思います。