和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

全てを手に入れたい(2)

周囲の思い

産休・育休から復職した本部下。彼女が所属する課は、課長以下中堅社員以外は全員別の部署からの兼務者でした。この一年間は中堅社員が一人でほとんど全ての実務をこなしてきたので、彼女の復職でようやく一息つけそうな見込みだったのです。

 

課長や中堅社員のそのような思いとは裏腹に、彼女は今の部署では自分の希望を叶えることができないと見切りをつけてしまいました。そして、自分の希望が達成できないのであれば、転職も辞さず – そんな含みを持たせた言い方をするのでした。

 

彼女が不在の間、課を守ってきた上司や先輩社員は面白くないでしょう。人手不足の中、産休・育休で欠員が出ても補充はなく、現有人員で凌ぐしかありませんでした。

 

件の中堅社員も以前から異動の希望を出していました。課での滞留年数は彼女よりも長いのですから、順番から言えば、彼の方が先に異動すべきなのでしょうが、課の事情がそれを許しませんでした。

 

もちろん、そのような状態になっているのは会社の責任なのですが、それはさておき、職場の同僚がこれまでどのような思いで彼女を待っていたかは、そこで一緒に働いていれば理解できるはずです。

 

 

説得失敗

私は慎重に言葉を選びながら、部署として彼女と同様に中堅社員のキャリアパスも考える必要があること、会社の事情として、本人の希望に即座に対応することが難しいことを説明しました。しかし、彼女を納得させることはできませんでした。

 

子供を産み育てるも仕事でキャリアアップすることも、彼女にとっては単なる希望以上の、達成すべき目標なのでしょう。思い描いたライフプランの実現のためなら、自分の言動で振り回されている上司や先輩社員の思いはどうでもいいことなのかもしれません。

 

彼女が私のことを元上司であり、自分にとっての良き理解者だと思って相談を持ち掛けたのだとすると、私は期待外れの存在で、彼女にとっては不快感を高めるための邪魔な存在になってしまったのだと思いました。