和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

ロールモデル不在

働きやすい職場

私の勤め先では、これまで、昇給・昇格と言うニンジンを目の前にぶら提げておけば社員は仕事に励むものだと考えていました。そのため、給料の多寡や肩書よりも自分のライフスタイルや時間を大切に考える社員にはどのように対応していいのか見当もつかないのだと思います。

 

会社が過去十数年の間に、有休消化率の引き上げや、産休・育休制度の拡充、その他、働きやすい職場環境を創出するための努力をしてこなかったわけではありません。しかし、それらは、世の中の流れに乗った結果であって、会社が率先して労働環境の改善に取り組んだものとは違います。

 

そして、そのようにして目指してきた“働きやすい職場”は、優秀な人材の確保や若手・中堅社員のつなぎ留めが目的だったものの、その効果は恐らく会社が期待していたほどではなく、かえって組織の疲弊を招いているような気がしてなりません。

 

たしかに、以前に比べれば、制度上は一般社員にとって働きやすい職場になったのでしょう。しかし、そのしわ寄せの行き先に気づいている社員は、この会社に自分の将来を託すよりも別の道を選ぼうとするのだと思います。

 

会社は、若手・中堅社員の流出が止まらない要因を、働き方の多様化や人材の流動化に求めますが、そもそも、職場に全く不満がなければ社員が転職を考えることなどありません。

 

ロールモデル不在

私が入社した頃は、残業は当たり前で、仕事の付き合いでもなければ、夜遅くまで仕事をするものと決まっていました。今では、時間外労働が厳格に管理されるようになったので、仕事に追われて深夜まで会社に残る者はほとんどいません。

 

たしかに私が若い頃に比べれば、無駄な仕事は大分減りましたが、一般社員の残業時間が大幅に削減されたのは、管理職が働き手として頭数に加わったことが大きく影響しています。多くの管理職は、終業時間になったら部下を送り出して、部下の手に余る仕事を自分たちで片づけています。

 

人手不足で、産休・育休を取得する部下や転職して行った部下の“穴”を補充する余力は会社にありません。自ずと管理職が穴埋めをする羽目になります。

 

仕事は部下にやらせて自分は夜の街に繰り出す – それは、若い頃の私が思い描いていた入社十年後、二十年後の自分の姿でしたが、そんな管理職は今の私の職場ではまず見当たりません。

 

仕事は楽になるどころか、昇格すればそれだけ忙しくなり自分の時間が削られます。手当は増えても、仕事に拘束される時間と職責の重みが増す分が十分に“手当て”されているとは言えません。

 

部下は上司をよく観察しています。中堅社員の退職が後を絶たず、管理職に昇格することを望まない社員が増えつつあるのは、職場にロールモデルが見つからないからです。