和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

全てを手に入れたい(1)

キャリア面談

この時期、私の勤め先ではキャリア面談なるものが行なわれ、上司は部下から将来取り組みたい仕事や転勤・駐在の希望などを聴取します。人手不足の中、各人のキャリアプランに筋道をつけるゆとりがあるかと言えば甚だ疑問ですが、人を育てることが会社の役割だとすれば、社員の希望を聞き置くだけではキャリア面談の意味はありません。

 

先日、元部下の女性社員から相談を持ち掛けられました。彼女は五月の連休明けに約一年間の産休・育休から職場復帰したばかり。上司の課長とキャリア面談を行ったものの、話がかみ合わなかったと不満を口にしていました。

 

私はすでに部下を管理する立場にないので、正直、この手の相談と、その後に何となく想像できる厄介事には極力巻き込まれたくなかったのですが、結局彼女に押し切られてしまいました。

 

熱い思いと冷める気持ち

彼女は、私が部長に就いた翌年に異動してきたので、ここの部署では六年目となります。ただし、お子さん二人の出産に伴う産休・育休期間を除く“実働期間”は約三年。滞留期間が異常に長いわけでもありません。後で課長に話を聞いたところ、彼女には慣れ親しんだ部署で少しずつ仕事のペースを取り戻してもらいたいと考えていたようで、それは休職者の復職に際しての社内のガイドラインに沿ったものだったのですが、彼女の意向は全く違っていました。

 

彼女の主張をまとめると、三十歳に差しかかった自分が依然として部署の“若手”として雑用を任されるのが耐えられないこと、また、産休・育休で“下がった評価”を取り戻すため、異動して新しい仕事で成果を上げたいということでした。そのためには転勤や駐在も引き受ける用意があると言います。

 

最近の傾向として、家庭の事情から転勤や駐在を忌避する社員が増え、また、昇格に興味を示さない若手社員も多いので、彼女のような意欲的な社員は会社としては歓迎すべきなのでしょうが、果たして、そんな彼女の思いを家族はどのように受け止めているのか。熱く語る彼女の思いとは逆に、私の気持ちは冷めて行きました。(続く)