和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

仕事観の違い (2)

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経歴調べ

この記事は、私くらいの世代と若手社員との間での仕事観のギャップをテーマに書き始めたものですが、前半を書いた段階では、Hさんと突き詰めた話をするまでには至っていません。その点、記事のタイトルは私の勇み足的なものになってしまいました。

 

ひとつ言い訳をすると、私がこれまで見てきた“やっつけ仕事”、とりわけ若手社員がそれを行なう場合、地味でコツコツこなす仕事を時間の無駄だと考える者が多かったことから、Hさんの仕事振りを見て、勝手な思い込みを抱いたのでした。

 

週明けの月曜日の午後、私はHさんとオンラインで打ち合わせを行なうことになりました。

 

それに先立って、金曜日の夕方、私は彼女の直属の上司である課長にこれまでの状況を伝えました。また、彼女の過去の期末面談の記録と考課表を見せてもらうように頼みました。前の部署での彼女の仕事振り、そして、上司からの評価を参考にしたいと思ったからです。

 

Hさんは入社後に人事部に採用後、ジョブローテーションのため昨年7月に営業部に異動となっています。そこから1年で私たちの部署に移ってきたことになります。

 

複数の元上司による面談結果から垣間見える彼女の特徴は、「英語が堪能」、「自分の意見をしっかり持っている」のが長所。伸ばして行ってもらいたいところは「周囲への一層の配慮」、「意欲に伴う実務能力」となっていました。

 

ハラスメント防止のための幹部社員研修のおかげで、部下を持つ管理職は、ネガティブワードをポジティブワードに変えるようになりました。以前は「短所」となっていた項目も、今では「伸ばしてもらいたいところ」に書き換えられました。

 

逆に、“延ばしてもらいたいところ”から元上司の本音を探ってみると、「周囲への一層の配慮」は、「独善的、自己中心的」かもしれませんし、「意欲に伴う実務能力」は、「一人前に仕事が出来ないのに上昇志向ばかり強い」と言うことなのかもしれません。

 

何故私がそのように意地悪い見方をするのかと言うと、面談結果に散りばめられているポジティブワードに反して、彼女の考課表のスコアは、ほとんど差のつかない若手社員にしては芳しくないからです。

 

今回のHさんの異動は、 - 私の穿った見方ですが - 営業部が私の部署の要請を渡りに船として厄介払いしたのかもしれません。

 

面談結果は、上司と部下で共有することになっているので、上司としては、その表現に結構な神経を使います。部下の欠点を“延ばしてもらいたいところ”に如何に言い換えるかがポイントとなります。

 

しかし、上司としてネガティブワードを使わないような配慮が必要だとしても、部下に直してもらいたい欠点が正確に伝わらなければ、本人にとっても会社にとっても不幸なことです。

 

私は、部下に限らず、対話の相手を傷つけるような言い方は慎むべきだと思いますし、言葉の選び方に注意を払うことには賛成ですが、パワハラのボーダーラインを気にするあまり、部下に言うべきことを言えない上司であってはならないと考えます。相手にとっての苦言を言葉を選びながら伝えるのが上司の役割です。

 

キャンセルされた対話の時間

私は月曜日の朝に、Hさんの英文契約抄訳に手直しとコメントを加えたものをメールで送りました。打ち合わせはこの日の午後遅めの時間なので、彼女にはそれまでの間に目を通しておくように伝えてありました。

 

ところが、私が昼食を終えて午後の仕事に取り掛かってすぐに課長から打ち合わせをしたいとの連絡が入りました。私は嫌な予感を覚えながらも、課長と話をすることにしました。

 

Hさんは課長に営業部に戻してほしいと直訴したそうです。何があったのか尋ねる課長に、私は、夕方に仕事の打ち合わせをする予定になっていると言いました。

 

Hさんの訴えは、私が彼女の仕事にケチをつけたことでやる気を失ったとのことでした。私が朝一番で彼女に送った抄訳の手直しが余程気に入らなかったのでしょうか。私としては、彼女に理解してもらえるよう言葉を選んで書き込んだコメントを“ケチをつけた”と言われるとは予想していなかったので、こちらの思いが伝えられることが出来ずに残念な気持ちで一杯になりました。

 

私は課長と話を続ける傍ら、今朝Hさんに送った抄訳の手直しを彼にメールして目を通すように伝えました。私が人の仕事に難癖をつけたのか、不合格の答案を添削したのか、まずそれをHさんの直属の上司に見てもらいたかったのです。

 

しばらく、モニター越しに課長の息遣いともため息ともつかない音が聞こえてきました。抄訳の全部を読む必要はありません。最初の1~2ページを斜め読みすれば十分なはずです。

 

頃合いを見計らって、私は課長に感想を尋ねました。「確かに酷いですね」。訳文の巧い・拙いの次元の話では無いのです。恐らく、翻訳サイトを利用したのでしょうが、重要な文言が欠落している一方で、省略すべき雑則的な文言が残っているなど一貫性が無く、文章自体が日本語になっていません。これでは抄訳を初めて目にする人は契約の要点を理解出来ません。

 

やりたい仕事と任される仕事

Hさんに振られてしまった以上、私にはもう手の施しようがありません。今後のHさんの扱いは課長に任せることにしました。

 

この記事のタイトル「甘い仕事観」について書き進めることは出来なくなってしまいました。Hさんと一緒に仕事をした期間は1週間足らず。時間をかけて話をしたわけでも無く、私としては彼女の人となりを十分に知ることも無く、お別れとなってしまうのでしょう。

 

彼女が会社でやりたかった仕事とは何だったのか、そもそも契約の抄訳など彼女の興味の対象外だったのか。それは私には分かりません。あるいは、本当に“自分の仕事にケチをつけられたこと”が気に喰わなかったのかもしれません。

 

いずれにしても、会社の中で仕事を任されるようになるためには、小さな成果を積み重ねて行くしかないのです。自分のやりたい仕事にたどり着くためには、仕事を任されるだけの信用力が必要です。それが、一緒に仕事をしている周囲の人間から与えられるものであるのだとすれば、彼女の振舞いは自らの信用力を毀損することにしかならないと誰かが教えてあげる必要があるのです。