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組織改悪

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弱体化

4月1日付の組織改編が発表されました。新設される新規事業のための部門に引き抜かれる者が少なからずおり、私の部署は、業務内容は変わらずマンパワーだけが削減される結果となりました。

 

担当役員が組織改編の大枠を説明した後、部長から具体的な部内の人員配置について話がありましたが、久しぶりに重苦しい雰囲気のミーティングとなりました。こんな時、オンラインのミーティングはそれぞれの表情が分からない分、重苦しさに拍車をかけることになりました。

 

部長は部下の面々に質問や意見を求めましたが、決まったことに対して口を開けば ‐ しかも、それが誰の目から見ても体制の改悪でしかないことから ‐ 文句しか出てきません。おそらく、そこにいる全員がそれを承知しているからこそ黙り込んでいたのですが、鬱々とした雰囲気を嫌ってか、部下を安心させようと考えたのか、部長が軽率な一言を発しました。「これまでも業務の効率化で仕事を上手く回して来たのだから、今回も何とか乗り切れることを期待している」。

 

私は思わず目を覆ってしまいました。何か言うべきか逡巡している間に、中堅社員の一人がかなり強い調子で発言しました。どこの課も欠員になっている中で何とか凌いで来ているのに、これ以上の効率化は無理。何とか乗り切れると言うのであれば、具体的な方策を示してほしい。

 

工夫しろ、効率化しろ。現場の仕事を理解していない役員が言うのであればまだしも、現場のトップが部下に投げかける言葉ではありません。しかも、「乗り切れることを期待している」とは、面倒なことを下の人間に丸投げする気満々と取られても仕方がありません。

 

現行の組織図でいくつかの課に“(欠員)”と示されていたポジション。それが新しい組織図では消えてしまい、その一方で“(兼務)”の文字が散見されるものになりました。事情を知らない人間が見ても気づくことは無いのでしょうが、中で働いている者からすれば、欠員状態の組織がさらに弱体化されたことを突きつけられているのです。

 

私が部長の頃に組織の効率化を進めようとしたのは、部の残業ゼロ・有休完全消化を目指したためでした。成果につながらない長時間の会議を減らして所定時間内に業務に集中出来る環境を整えることと、無駄な仕事を削減することで所期の目的を達成できたのですが、その後、転職者や他部への異動者があっても人員の補充が叶わなかったり、他部の仕事が回ってきたりと、効率化を進めるとその分負荷が増えるジレンマに苛まれてきました。

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私が今の部長に業務の引継ぎをした際には、これまでの経緯を噛んで含めるように説明したはずだったのですが、それを理解してもらえなかったのなら、今の部員にこれから予想される苦境を強いることになった責任の一端は私にもあることになります。

 

安請け合いのつけ

部長は、中堅社員の指摘に直接答えようとせず、私に話を振ってきました。「前部長から見てどう思われますか」 - 私が部長の職から降りたのはもう一年も前の話。今更意見を述べる立場には無いものの、話を振られたので、“一部員”の意見と断って話をしました。

 

部の体制は大幅な変更が無いように見せかけているが、欠員者を“無かったこと”にするのであれば実質組織を縮小したことになるので、それに応じて業務量を見直すのが自然であること。複数の上司に仕える兼務者には多くは期待出来ないこと。それが出来ないのであれば、課長は部員の仕事の一部を肩代わりし、部長も課長以下の仕事を分担すべき - 私は概ねそんな話をしました。

 

上の人間は、部下の残業を減らせ、有休を消化させろと言いながら、もう一枚の舌では、言われた仕事は滞り無くこなせ、と言っています。これまでも業務の効率化の工夫を凝らしてきましたが、打つ手も無くなりました。残る手立てとしては、縮小された新しい組織で対応できる程度に業務の質を落とし量を減らす以外にありません。そもそも、今の業務の一部は、本来隣の部署の仕事だったのですから、事情を説明して引き取ってもらうことだって出来るはずです。

 

ところが、組織改編の部内説明後、部長から連絡がありました。どうやら私の話が、文句を言った社員に迎合して部員を煽るような言動だったと言うことのようです。私としてはそのような意図は毛頭無く、この先、部全体が疲弊して業務が回らなくなることを心配しただけなのですが、部長はその点についてはあまりピンと来ていません。

 

私の属する課は、課長の下、私の他に男性社員三人と女性社員二人。女性社員の一人はゴールデンウィーク明けには産休に入ることが分かっています。そして、男性社員の一人は別の課から異動して来たのですが、現在病気休職中。他の課も別の部署に部員を引き抜かれ、その穴は兼務者が埋めることになっています。

 

年度の始めから夏までは何とか凌げたとしても、それ以降の予算策定時期に突入すると、この新体制では身動きが取れなくなることは目に見えています。昨年の秋口からの部員の働きぶりをつぶさに観察していれば、業務の棚卸しをするまでも無く、ギリギリの体制で仕事をしていることくらい分かるはずなのです。もっとも、それが分かっている管理職なら、このような組織改編を素案の段階で大反対したことでしょう。

 

私は部長に、もう一度各課長から話を聞いて、本当に新体制で仕事が回るのか確認することと、もし、かなり厳しいと言う意見が出たなら、早めに増員の手立てを講じるように提言しました。組織改編直後に人事部に増員の要請を行なうのは、情けないことですが、背に腹は代えられません。そうしなければ、自分で自分の首を絞めることになってしまいます。

 

“安請け合い” – そんな言葉が私の頭に浮かびました。組織改編の決定までにどのような経緯があったか、私に知る由もありませんが、部員が安請け合いの“下請け”をするのは最悪なパターンです。うまく行く気がしない新組織が来月から始動します。