和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

余人をもって(1)

恒常的な定員割れ

業務の効率化については、過去の記事で何度か触れたことがあります。

lambamirstan.hatenablog.com

 

lambamirstan.hatenablog.com

 

何をもって“効率化を達成できた”とするかについてはいろいろな考えがありますが、かつて私が管理職だった時に効率化達成の指標としたのは“残業ゼロ”でした。

 

結果として、年間を通じての残業ゼロの達成は叶いませんでしたが、私の部署では数か月間、残業無しで所定の業務を滞りなく行なえる状態が続きました。それがストップしたのは、上からの指示で他部署の仕事を引き受けることになったからです。

 

業務の効率化によって残業時間を減らすことは目先の目標ではありますが、効率化自体が何かを生み出すわけではありません。効率化によってできた余力でボトムアップ的に新しいアイデアを考え出し、若手社員のスキルアップに中堅社員が注力できるような環境作りが可能になる – そう私は考えていました。

 

私は、効率化の先にあるはずの本当の目標に手を伸ばす前に役職を降りてしまいました。私の考えに共感してくれた当時の部下はまだ数人残っていますが、「残業ゼロよ、再び」という雰囲気ではありません。

 

当時と今とで大きく違うのは、人が減ってしまったことです。今は、部署の定員割れが常態化していて補充の目途が立っていません。表面的には業務に支障を来たしているようには見えませんが、それは、残された部員それぞれが人手不足をカバーしているからであって、業務量そのものが減ったわけではありません。昔ほどではないにしても、それなりに残業して仕事が滞らないようにしてくれているのです。

 

私が恐れているのは、この状態が長く続けば続くほど、定員割れという異常事態が忘れ去られ、負担の増えた部員の士気が低下することです。すでに士気の低下は進んでいるのかもしれません。

 

裾野広がらず

今の経営陣がどれほどの危機感を抱いているのか、私には分かりません。つい最近、チャット型AIの業務への導入が決まりました。まだ検証段階ですが、低付加価値業務の削減によってできる組織スラックを付加価値の高い業務に振り分けることが目的とのことですが、新卒採用者やキャリア採用者の離職率を抑える努力の方が重要なはずで、それを抜きにして高付加価値業務のための余力を持てるようにはなりません。

 

人材の流出が止まらず、社員のすそ野を広げられないのは、高付加価値業務に取り組む以前に、知見の蓄積すら危ぶまれる状況です。そこに手を付けずして、世間の潮流に後れないようチャット型AIを導入するのは、無駄とは言わないまでも順番が違うような気がします。(続く)