Intermission 新型肺炎狂騒曲

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繰り返される新型ウィルス騒ぎ

トイレットペーパーが店棚から消えた映像を見ると、私などはオイルショックのときのパニックを想起します。これまでも、新型のウィルス騒ぎなどが起こると、一部地域でトイレットペーパーの買い占め騒ぎが起きました。時代が変わっても人間の行動はそれほど変わらないということが今回の一件で良く分かりました。

 

病気に感染しないためには無駄な外出を控えるのが一番だと思いますが、会社勤めをしている者にとっては、土台無理な話。“濃厚な接触”を覚悟の上で混雑する電車に乗り込まざるを得ません。

 

企業によっては、積極的な時差出勤の推奨などで感染リスクの軽減に努めているところもあるようですし、テレワークを開始したところも目立ち始めています。これはいい兆候です。予防効果を期待したいところです。

 

このような新型ウィルス騒ぎは数年間隔で起きています。病気そのものの治療もさることながら、病気の流行下でどのように普段の生活を維持するのか、また、どのように企業活動を継続するのか、ということも重要なはずなのですが、騒ぎがひと段落すると、何故か対策の検討が宙に浮いたまま、時間と共に霧散してしまうようです。そして、また、数年後に新たなウィルスの脅威に晒されて大騒ぎする、ということが繰り返されます。

 

タイミング悪く

先月の半ばあたりから、私の勤め先でも新型肺炎対策を真剣に検討し始めました。ちょっと遅い気もしますが、やらないよりはましです。各社員は毎日検温して部長に報告します。体温が37.5度以上の社員は即出社停止。不要不急の外出・出張の禁止。宴会の禁止。

 

そんな中、先々週の木曜日(2月27日)から何となく喉の痛みを感じ始めた私でしたが、土曜日の早朝から現地とのテレビ会議のために休日出勤する羽目になってしまいました。部下のうち、会議後に資料作成をしてもらう2名には出社してもらい、残りの6名は自宅からビデオ通話で会議に参加してもらいました。

 

会議は無事に終わり、午前中には資料作成も完了し解散となりました。私はそのまま母親の入院先に見舞いに行くつもりだったのですが、どうも体の様子がおかしい。コートを着込んでいるにも拘わらず、背筋がゾクゾクして体の震えが止まりません。心なしか眩暈もします。結局、その日は母の見舞いは止めて帰宅することにしました。次の日の午後は娘の卒業写真の前撮り。家族写真も撮ります。ここで倒れると後で何を言われるか分かりません。

 

翌日体調が戻らないまま、何とか家族写真を撮ることはできました。満面の笑みの私でしたが、着ていたワイシャツの背中は汗でびっしょりです。撮影を終え、電車に乗り込み何とか最寄りの駅までたどり着けましたが、そこから自宅までの10分の道を歩ける気がしません。買い物をすると言う娘二人を残して、私は妻に付き添われてタクシーに乗り込みます。運転手さんは明らかに嫌そうな顔をしていました。

 

帰宅して体温を測ると38度を超えていました。救急外来の病院に行くことも考えましたが、とにかく横になりたい。私は着替えるとそのまま布団に潜り込み朝まで熱にうなされていました。

 

出社停止

翌月曜日。悪寒はやや治まり、体温も37度前半と少し下がっていましたが、私は上司と部下に休暇取得のメールを送ると、自宅から徒歩で5分のところにある総合病院に向かいました。幸いなことに、私の症状から新型肺炎の疑いはなく普通の風邪と診断されました。

 

帰宅後、会社に診断結果をメールすると、すぐに会社の医務室から電話がかかってきました。診断結果をもう一度聞かれ、熱が下がるまでは出社停止。平熱に戻ってから48時間は在宅勤務。その後出社の可否を再度検討するとのこと。また、先週木曜日以降私と“濃厚な接触”をしたことが疑われる社員も在宅勤務になりました。結構大事です。私はもう一度言いました。「私は通常の風邪だと診断されたのですが」。看護師曰く「症状が悪化した後で新型(肺炎)の陽性と判定されることもあるんです」。要は、私が“白”とはっきり分かるまでは、巻き添えを食らった在宅勤務者も出社できないということのようです。

 

通常であれば、私が風邪で休もうと部下が仕事を回してくれます。しかし、今回は頼りにしている部下の“上半分”が在宅勤務を強いられることとなってしまいました。これは想定外のこと。しかも今週は予算の締め切りを控えているのでした。

 

これではゆっくりと体を休めている場合ではありません。しかもいつから出社できるかの見通しも立たない状況。どうするか考えていると別の意味で具合が悪くなってきそうでした。

 

テレワークに初挑戦

今までもちょっとした仕事を自宅で片づけてきたことはありますが、会社の業務を家で本格的に行うことは考えていませんでした。会社も社員のテレワークを想定していません。そもそも会社のイントラネットに社外からアクセスするには、会社貸与のパソコンが必要となります。シェアドライブの使用も禁じられています。

 

突然出社停止を言い渡された私はなす術がありません。部に電話して様子を聞くと、残された部員は3名。部長以下中堅までが出社停止となり、プチパニック状態でした。私も発熱と悪寒で仕事どころではありませんでしたが、とりあえず時間を決めてビデオ通話で打ち合わせを行うことにしました。

 

何はさておき、今週中に予算資料を完成させなければならず、詰めの作業を行うには在宅組と出社組で分かれて仕事をするのはかなり効率が悪い。とりあえず、出社組には関連するファイルが保管されているイントラネットのフォルダを特定させ、それぞれのフォルダのスクリーンショットを撮らせて全部員にメール送信させました。これで、在宅組は出社組に必要なファイルをメールで送るよう指示ができます。何とも前時代的なやり方ですが、文句は言っていられません。

 

試行錯誤

翌日の火曜日は、体調がかなり快復してきました。体温を測るとまだ微熱がありましたが、前日まで続いていた悪寒も無くなり、体のふらつきもありません。

 

昨日の打ち合わせで、毎日午前10時に在宅組と出社組との定時連絡を行うことにしました。昨日の作業の進捗を報告し合いましたが、芳しくありません。どのような仕事でも手戻りが生じると効率が一気に下がります。

 

とりわけ共同作業ともなると、お互い綿密に工程を確認して進めないと後で余計なやり直しが発生することにもなりかねません。会社で机を並べて仕事している時なら簡単にできる確認作業が、在宅組と出社組に分かれると簡単ではなくなります。結局この問題を解決するため、ビデオ通話を常時オンの状態にして仕事に取り掛かることにしました。

 

私の勤め先は、フレックスタイムを採用しているため社員の出社時間はまちまちです。テレワークも同じで、各部員それぞれの出社時間になるとビデオ通話に参加して仕事に取り掛かります。ビデオ通話とは言え、お互いの声しか聞こえません。誰も自分の部屋を他人に見せたがる者はいないため、ビデオ機能をオフにしているのです。私も同じです。

 

必要なファイルを“取り寄せる”手間はかかりますが、ビデオ通話でつながっているため、あたかも机を並べて仕事しているのと変わらずに作業の確認ができます。おまけに私語の無い環境が作り出されたことから、仕事への集中力が高まる結果となりました。思いもよらないテレワークの効能です。

しかし、この日終業時間後にある社員からメールが届きました。終始監視されているようでつらい、かえって仕事に集中できない、という声でした。確かに、あの静まり返った空気を重圧に感じる者もいるのでしょう。

 

翌日の定時連絡で、私から提案しました。50分作業と10分休憩。もちろん昼休みは1時間。集中力を維持するには休憩も必要。タイムキーパーは私がやることにしました。これによって、出社組も同じ“時間割”で仕事をすることになるのですが、他の部署からは、小学生か?と揶揄されたとか。

 

騒ぎの後

水曜日に再度病院を訪れ診察を受けた結果、勤務可能と診断されました。熱もありません。会社の医務室にそれを伝えたところ、翌木曜日まで在宅勤務を命じられました。

 

私のテレワークが解除され、ようやく金曜日に出社できることになりました。通勤が無い分、体の負担が少ないテレワークですが、そのような良い面もあれば悪い面もあります。まず私の勤務先がテレワークを行うためのインフラが不十分であること。仕事とプライベートのオン・オフがつけづらいこと。

 

私のような、仕事は会社でやるものだという意識が体に染みついた人間にとっては、テレワークはどうも馴染めませんでした。これを習慣化させてしまうと、四六時中仕事に追い回されている気持ちにさせられるような気がします。

 

結局、私は新型肺炎ではなかったので内心ほっとしていますが、今回の騒ぎはまだまだ続きそうです。私も無駄な外出は控えて、週末は家で読書三昧と行きたいと思います。