和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

在宅勤務と出社の狭間

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元の習慣への回帰

今月に入り、私の勤め先では在宅勤務が週2日までに制限されたため、久しぶりに通勤電車に揺られる生活に戻りました。

 

往復2時間の通勤時間は読書に当てることにしているので、無駄な時間が増えたことにはなりませんが、1年余りの在宅勤務に慣れ親しんだ頭と体を“元の状態”に戻すのは、少々ストレスを感じています。新しい生活習慣が当たり前になってしまうと、古い習慣に逆戻りすることに抵抗感を覚えます。

 

先月までは毎朝、洗濯と掃除、夕食の下ごしらえを勤務開始前までに片づけるルーティンとしていましたが、これからは私が出勤する日は、朝に弱い娘たちが少しだけ早起きしてこれらの作業をこなしてくれることになりました。

 

会社はフレックスタイム制なので、私は朝の7時から勤務を開始して午後3時半には帰途につくことを予め部長に伝えています。早出の習慣は役職についていた頃からのものでしたが、当時は、諸々の仕事をこなしているとあっという間に日が暮れてしまうような一日でした。それに比べれば、自分のペースで業務を行ない、予定通りに帰宅出来るだけでも恵まれていると思います。

 

出社しても三密回避

部内にはもう二人、完全在宅勤務を希望して最後まで上司に抵抗していた社員がいましたが、私は二人に、あまり度が過ぎると就業規則違反になるため、社令に従った上で、在宅勤務の必要性を訴えるように忠告しました。

 

一人は、この春に産休・育休を終えて職場復帰した女性です。こちらは在宅勤務中も子供を保育園に預けて仕事をしていたため、園への送迎が出来れば出社勤務は出来るものの、本人としては、在宅勤務で業務に支障が生じていないのに、なぜ出勤する必要があるのかと、働き方そのものへの疑問を呈しています。

 

たぶん、多くの社員が同じ疑問を持っていると思います。私もその一人です。在宅勤務期間中に、承認関係の書類や入出金の伝票の起票・承認はペーパーレスで行えるようなシステムが導入されました。あらゆる打ち合わせはリモートで行なっています。出社しなければこなせない仕事は今やほとんど存在しません。

 

先週出社すると、出社率は5割強と言った感じでした。社員は最低でも週三日は出社することになるので、事務所内の人口密度は、今後、平均するともう少し高くなるのでしょう。

 

私が苦笑してしまったのは、依然として“密をさけるため”に、会議室の使用が不可になっていること。事務スペースの打ち合わせテーブルも使用出来ないため、部内の朝会や、その他の打ち合わせも各自のパソコンを使いリモートで行うことです。

 

出社しろ、しかし、密は避けろ。現状からして致し方無いことなのかもしれませんが、果たしてそれでは何のための出社勤務なのか、社内に誰か説明できる人間はいるのでしょうか。オーウェルの小説に出てきそうな管理主義的な匂いを感じたのは私だけでは無いはずです。

 

この状況に何の疑問も感じずに従うより、件の彼女のように在宅勤務の有用性を会社に説く方が普通だと思います。もっとも、彼女は、案外(?)あっさりと抵抗を止めてしまった私に対して失望しているかもしれません。

 

私としては、例え正論であっても、就業規則の服務規定違反と言われることの方が心配だったのです。私はあと数年で定年、しかも、昇進や昇格とは無関係の立場になりましたが、若い人たちはまだ先が長いわけで、ここで会社から変なレッテルを貼られてしまうデメリットを考えた次第です。

 

世の中は今後、在宅勤務の恒常化に進むものと私は期待しています。今すぐは無理だとしても、やがて – そう遠くない将来に – その日はやって来るはずです。

 

当てが外れた在宅勤務

さて、もう一人、在宅勤務継続を懇願していたのは、在宅勤務制度が開始された直後に家を買った部員でした。それまでは、夫婦二人の社宅住まいでしたが、在宅勤務が恒常化するものと信じ、郊外の一軒家を手に入れました。

 

通勤の便は決して良くは無いものの、住環境優先、通勤時間は二の次で引っ越し先を決めたそうです。在宅勤務なら、出社は多くてもせいぜい月に数回程度と考えていました。ところが、週3回の出勤となると、片道2時間以上の通勤は体力的にきついと嘆いています。

 

彼の場合は、読みが甘かったとしか言えません。我が社が保守的な会社であることを忘れていたわけでは無いでしょうが、少なくとも進んでいる会社では無いのは知っているはず。

 

彼は、今後、コロナ禍が完全に鎮静化すれば、出社が基本、在宅勤務は緊急時のみ、とほとんど元の働き方に戻る可能性を考えると憂鬱で仕方が無いと言います。私は、“ダメ元”で人事部に社宅に戻ることを掛け合うよう彼に言いました。

 

社宅はあくまでも、自宅を手に入れるまでの“仮住まい”。彼の場合、自宅購入による退去なので、特段の理由が無ければ、社宅への再入居は不可なのですが、もし、会社が許すのであれば、今の家を賃貸に出してでも社宅に戻るのが良いのかもしれません。

 

実務を行なっている一般社員は、業務に支障を来たさずに在宅勤務を行なえることを知ってしまいました。業務の効率化は残業時間の減少など目に見える形で表れています。

 

耳に入ってきた噂では、労働組合は次の春闘で在宅勤務の日数制限撤廃を会社と交渉するとも聞いているので、その結果に期待したいと思います。