在宅勤務の逃げ場 (1)

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ある若手社員の不調

この記事を書いている2月28日現在、東京都は依然として緊急事態宣言下にあります。私の勤め先では、社員に対して不要不急の出社は避け、原則として在宅で業務を行なうよう指示出ています。

 

人事部では全社員を対象に、定期的に在宅勤務に関するアンケートを行なっています。在宅勤務により、通勤や出社によるストレスから解放され、業務に専念できることを評価している社員もいれば、独りでの仕事に閉塞感を感じている者もいるようです。私の推測ですが、経験に乏しく先輩社員の助けが必要な社員の中には、会社で仕事をしている時の方が仕事が捗ったと感じている者もいると思います。

 

自分で仕事の段取りを考え、タイムマネージメントが出来る社員は、在宅勤務でもそれなりの成果を上げられるでしょう。しかし、仕事を行なう上で、いわゆる“メンター”を必要とする若手社員にとっては、在宅勤務は仕事の方向性を見失ってしまうリスクを孕んでいる可能性があります。

 

指導的な立場にある中堅社員の中には、若手社員がうまく仕事を進めているか十分に目が行き届かず、在宅勤務を「やりにくい」と不満に感じている者も少なからずいることでしょう。

 

昨年の春、在宅勤務が本格的にスタートした時に、ビデオ会議システムをオンにしたまま仕事をしたいと申し出た若手社員がいました。結局それは、他の社員からの反対に押されて半年足らずで止めになってしまいました。

 

その若手社員、A君の様子がおかしいと直属の上司である課長から話がありました。年明け早々に始まった技術データの解釈作業で、退職するベテラン社員の業務を引き継いだA君でしたが、ミスを連発し仕事が捗っていない様子。オンラインで打ち合わせをしていても、課長の問いかけに対して、噛み合わない返事しか来ないとのことでした。私は部長職を外れた身ではあるものの、後任の部長が着任する4月までは部長代行を務める課長の補佐を行なうことになっています。その課長から私にA君と話をするよう頼まれました。

 

もし彼がこれまでのように会社で仕事をしていれば、先輩社員が彼のミスを早くに見つけ、傷口が大きくならないうちに軌道修正出来たのではないかと思います。私が指導的立場の社員に対して、もっと小まめにA君の仕事ぶりに気を払うように指示していれば避けられたことではなかったかと考えると、A君に対して申し訳ない気持ちが湧き上がってくるのでした。

 

心と体の食い違い

私は、A君の指導役である中堅社員と話をしました。A君に任せてあった仕事はほぼ一からやり直しになってしまい、1か月近く二人三脚で成果物の修正作業を行なっていたところ、ここ数日間はA君の分担する作業が全く進んでいないとのこと。そのことをA君に尋ねると、これまでのミスで頭が一杯になり仕事が捗らなくなってしまったとの答えが返ってきました。仕事を休んではどうかと提案されたA君でしたが、作業量は減らしても仕事を続けることを希望しているようでした。

 

しかし、指導役の社員の話では、A君担当の仕事は全く進んでおらず、その状態が数日続いていると言います。表面上A君は仕事を続ける意欲を見せていますが、行動は食い違っています。もっとも、上の人間が休むように言っても、責任感の強い人間ほど、作業の遅れで周囲に迷惑をかけたくないと言う気持ちや、社内での評価が下がることを気に掛けるあまり、仕事を続けることを主張しがちです。

 

私はこれまで、直属の部下で、うつ病と診断された者を二人見てきています。ともに、体調不良で休む日が続き、後になって話を聞くと、毎朝足がすくんで家から出られなくなっていたことが分かりました。そして、二人とも、「明日は出社して仕事を間に合わせます」と言うようなことを言います。頭では仕事をしなければと考える反面、体は言うことを聞かないのです。

 

A君の場合、仕事が手につかない状態が続いており、業務を続ける状態に無いことは間違いなさそうです。これが私の取り越し苦労であれば、それで良し、ですが、ともかく、A君には早めに会社の産業医に相談してもらおうと思いました。

 

問題は、そのことを誰がどのようにA君に話すかと言うことです。A君は生真面目で自分の評価をとても気にするタイプです。頭ごなしに医師の診察を受けるように言えば、かえって頑なになってしまう可能もあります。(続く)