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本当の「できない病」とは?

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できないものはできない

以前の記事で、「できない病」について触れたことがあります。「人がいない」、「予算が無い」などを言い訳にせず、仕事を進める知恵を出すのが社員の務め – そんな社内ポスターの話でした。

lambamirstan.hatenablog.com

 

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しかし、冷静に考えてみれば、就職氷河期で採用を絞り、長引く景気低迷の中、コスト削減や合理化を進めてきた会社であれば、すでに「やるべきことはやった」というレベルに達しているのではないでしょうか。この上乾いた雑巾をいくら絞っても何も出てきません。できないものはできないのです。

 

コロナ禍の影響により、程度の差こそあれ、どの業界でも先行きの不透明感が一層高まってきていることは否めません。しかし、コロナ禍以前に、会社の経営者であれば、先を見越して会社の“贅肉”を落として筋肉質の組織に体質改善していくことはとっくに考えて、実行に移しているです。

 

社員目線で物事を考えられる会社や、働き方の多様化に対応しようとする会社は、コロナ禍による在宅勤務の必要性を奇貨として、リモートワークを積極的に進め、社内のフリーアドレス化などによって事務所スペースの削減に努めているようです。

 

私も過去の記事で度々触れましたが、コロナ騒動によって半ば“強制的に”在宅勤務を行なったことにより、多くの会社員は、毎日時間をかけて通勤することに疑問を感じているのではないかと思います。もちろん、中には家にいるよりも会社にいた方が仕事が捗ると言う人もいるでしょう。しかし、「仕事は会社でするもの」と言う、これまで当たり前だったことが実は違っていた、在宅勤務でも十分に仕事に対応できることが証明されたわけで、今まで長時間満員電車に揺られていた生活は何だったのかと、疑問に感じても不思議ではありません。

 

私の勤め先では、在宅勤務は時限措置です。新型コロナ感染が収束すれば、在宅勤務も終わりなりますが、依然として新規感染の勢いは収まらず、在宅勤務は続いています。とは言え、私も含め会社に出ないとできない仕事をこなすために出社を余儀なくされている社員もいます。

 

稟議書の捺印、役員への案件説明。入出金の伝票はとっくの昔に“電子承認”が導入されましたが、証憑の現物を残しておくために、わざわざ電子承認した伝票を印刷して捺印しなければならないと言う、悪い冗談のような仕組みが残っています。

 

在宅勤務が主流になりつつある中、出社を強いられる業務が減らないことこそ、管理部門には知恵を絞ってもらいたいのですが、どうやら彼らは「できない病」にかかっているようです。

 

本当の「できない病」とは

人も予算も無い中で、知恵を絞って何とかしろと号令をかけるのが経営陣のすることでしょうか。正にその知恵を絞ることこそが、あの人たちに求められる商才なのではないかと思うのです。ボトムアップで様々なアイデアを募るのも良いでしょう。しかし、「知恵を絞るのがお前たちの仕事だ」と下の人間に厄介なことを丸投げする経営陣は、自らの無能を高らかに宣言しているようなものです。

 

たまに、役員の中に、「それを自分が言ってしまっては、誰も育たないじゃないか」などと詭弁を弄する者がいます。あるいは、「誰々に相談してみろ」と言う者もいます。そのような役員に限って自分では何一つアイデアを出さずに、人の提案を評論する立場に逃げ込むことしか考えていません。

 

現場で働く人間だからこそ出せる知恵があり、会社経営に携わる役員だからこそ出せる知恵があるはずです。違った目線を持った人間が知恵を出し合うことが重要なのであって、自分の置かれている立場での考えを持つことが出来ないのであれば、現状を打破することに全く貢献していないのに等しいと言わざるを得ません。

 

さて、在宅勤務の話に戻すと、出社しなければならない業務を極力削減し、究極的には完全在宅勤務を達成すべきと言う声が社内でも高まってきています。実務者レベルの会議や打ち合わせは、社内外問わず、ほぼビデオ会議システムで行うようになったので、会社の会議室や応接室は最早必要無くなりました。決裁のための書類もペーパーレス化することは難しくないはずです。

 

それにも拘わらず、役員会議は依然として会議室で行われ、決裁書類も“紙”で持ち回りされます。完全在宅勤務が可能なはずなのに、それを阻んでいるのは、パソコン操作に疎い役員がいるためです。人や予算が無いからできないと言うのではなく、単に“腰が重い”だけなのです。

 

今回、時限措置とは言え、在宅勤務制度が始まったのは、新型コロナ感染の予防が第一の理由です。3密を避ける。通勤を避ける。不要不急の外出を極力控える。そのための在宅勤務実施でした。実務レベルではうまく対応できており、残されたのは上層部のやる気だけです。

 

この期に及んで、会議室に集まり、書類に捺印することに拘る理由は何も無いはずですが、それでも一歩踏み出さない – あるいは、踏み出せない – のは何故なのか。

 

役員が出社すれば、世話をする社員も出社せざるを得ない。感染リスクを低減させるには、役員以下社員まで含めて、在宅勤務で仕事ができるように工夫するのが最善のはず。それでも出社し続けるのは何故なのか。

 

習慣化した仕事のやり方を変えたくない - これこそ本当の「できない病」なのです。