窓際がいっぱい

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ポストが無い

我が社の人事担当部署では、ポスト管理が頭痛の種になっています。“上がり”のポストである部長や室長といった役職に就けなかった幹部社員は、かつては関連会社への片道出向や地方の事業所への異動が待っていました。その後55歳になれば役職定年です。

 

しかし、昨今、不採算部門や関連会社の削減により管理職のポストが減る中、バブル入社組を中心に、年功制度の残滓として行き場を失った“役職の無い幹部社員”が多数存在します。部室長に就ける社内資格はあるもののポストが無いため、彼らはラインから外されますが、それでも、“部門長付き”や臨時の“特命部長”などの肩書が与えられ、部長・室長とほとんど変わらない待遇が保障されます。

 

コスト削減策として不採算部門を減らしたにも拘らず、これでは人件費の削減が思うように進みません。この状態を是正するのに、余剰幹部社員の一斉降格という手もありますが、“見栄え”が悪く社内的にマイナスの効果をもたらしかねないため、人事担当部署はバブル入社組の定年をひたすら待つことにしていました。

 

ところが、これに対して上層部は“知恵を絞れ”とお決まりの一言で人事部長にプレッシャーをかけます。結局、苦肉の策として、会社は新規の幹部社員昇格数を減らすことにしましたが、これが新たな波紋を招きました。数年前の出来事です。

 

割を食った幹部候補

これまでは、同期入社は“その時”が来れば、ほぼ自動的に幹部社員になれました。幹部社員になれない者の方が圧倒的に少なかったのです。それが、これからはそうは行かないとなると、対象となる社員やその上司は慌て始めます。

 

昇格の絶対数が決まってしまうと、次期幹部社員候補の中から誰を選ぶかについて喧々諤々の議論が繰り広げられました。方法論として、ペーパーテスト、役員面接、あるいは社長一任などいろいろなアイデアが出ましたが、最終的には客観性を重視するという理由で、コンサルティング会社を使った選抜試験を行うこととなりました。

 

選抜試験は1泊2日の合宿で、グループディスカッションやペーパーテストによって、リーダーとしての資質や適性を評価します。第三者機関を使った公正な試験なので、誰が幹部社員に選ばれても文句は言わない、ということで社内は納得済みのはずでしたが、その結果は目を疑うものでした。

 

対象者20数名のうち、コンサルティング会社が「合格」と判定した者はたった1名。これには人事部長も頭を抱えました。何しろ経営陣からの覚えの良かった幹部候補が悉く悪い評点となった一方、これまで人事考課の結果が芳しくなかった者が“1番”となったわけです。会社が高く評価する社員と、コンサルティング会社が管理職に相応しいと評価する社員が全く異なるということは、正に両者の“目の付け所”違うということに他なりません。

 

この話は瞬く間に社内に広がりました。“不合格”となった者を庇う声や人事考課のあり方を揶揄する声、現役の幹部社員全員も試験を受けるべきという声など様々な意見が飛び交いました。

 

会社とコンサルティング会社は協議しましたが、コンサルティング会社が自分の評価方法を見直すことはしませんでした。評価方法の見直しは、それが適正でなかったと認めることになるわけですから当然です。結局は、評価結果はそのままに、合格ラインを下げて幹部社員昇格者を一定数確保することとなりました。

 

実はこの時、昇格できなかった者の中に私の元部下がいました。人格的にも問題なく、仕事もできる男でした。彼の落ち込み様は見ていられないくらいで、かけてやる言葉も見つかりませんでした。また、幸い幹部社員に昇格した連中も、“1番”となった者以外は、“補欠合格”と陰口を叩かれる始末で、散々な幹部登用試験となりました。私自身、今、選抜試験を受けたら合格できなかったかもしれず、そう考えると、このタイミングで幹部社員昇格の時期を迎えた社員が割を食った形になったわけです。

 

管理職の資質

大問題となった幹部登用試験の後、会社は、新入社員のときから将来管理職となることを見据えての研修プログラムを実行することとなりました。これには、登用試験を行ったコンサルティング会社からの指摘が影響しています。要は、管理職登用試験を受けるまで対象となる社員がそのためのトレーニングを受けていないこと、また、受験者の中に、明らかに管理職としての資質に欠ける者がいたことです。

 

これまでは年功序列で、社員はほぼ自動的に管理職に上がれていましたが、ここに来て我が社もようやく普通の会社のような管理職の登用制度を導入することになったわけです。

 

この年以降も、同じコンサルティング会社による管理職選抜試験を行っていますが、結果は芳しくなく、現在でも合格ラインの“調整”が行われているようです。

 

しかしながら、現役の幹部社員への対応は置き去りのままです。部下の管理指導という点で明らかに“向いていない”者も少なからず存在します。降格人事という、我が社としてはドラスティックな措置は無理だとしても、資質を備えていない幹部社員への対応を適宜行わなければ、有能な若手・中堅社員を失うことになることを会社は認識すべきだと思います。