和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

お盆休み

まだ妻の両親が健在だった頃、夏休みは妻の実家へ、年末年始は私の実家へ帰省するのが暗黙のお約束になっていました。お互いの両親への顔見せのために休みを取るのは、気の乗らない仕事をやらされるのと同じくらい億劫なものでした。

当時、両親との関係が良好ではなかった妻にとって、実家で過ごすのは憂鬱な時間で、私が半ば無理に彼女を連れて里帰りしました。

妻の両親が鬼籍に入ってからは、義兄が音頭を取って墓参りを兼ねた兄弟姉妹家族の集まりをお盆に合わせて行なっていましたが、やがて兄弟姉妹だけの集まりに変わり、昨年はその集まりもなくなりました。

私の母親は、「家族で顔を見せに来る必要はない」と言い、ここ数年は私が月に二回ほど様子を見に行くだけになりました。母としては、まだ身の回りのことは独りで出来ても、息子家族をもてなすだけの気力がなくなったということで、妻や娘たちとは、たまに電話で長話できればそれで満足だと言います。

こうして、年に何回か親族が一同に会することもなくなりましたが、帰省が年中行事でなくなって、私の気分は楽になりました。義姉や義兄と不仲というわけではありませんが、会えばそれなりに気を遣います。かつて嫌がる妻を実家に連れて行った私は、内心、自分自身も好き好んでしていたわけではありませんでしたが、そうすることが義両親への義理だと考えていました。

義理立てする存在がいなくなった今となっては、夏休みや年末年始の休みは自分と家族のためだけの時間となりました。親戚づきあいのために気疲れする必要のない、ゆったりと家族だけで過ごす時間を手に入れることができました。