和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

リタイア後の楽しみ

来年の一月から、私は晴れて無職の身となります。やりたいことは多過ぎて、いきなり全て取り掛かるのではかえって中途半端になってしまいそうで、“バケットリスト”の優先順位をつける必要があります。

結婚してからこれまで、折に触れて妻とは老後の過ごし方を話してきましたが、外向的な彼女の希望は、体が動かせるうちにできるだけたくさん旅行することです。

それは結構なのですが、妻の闘病前、夫婦水入らずの二回の旅行は、道中喧嘩続きでした。方々を見て回りたい妻と、ゆっくりじっくりと鑑賞したい私。“旅行作法”の違う人間が一緒に行動すると、お互いに不満が生じることになります。

思えば、結婚当初、妻と私は旅行先すら意見が合わず、それぞれの夏休みは別行動にして、帰宅後にお互いの土産話をするといった感じでした。娘たちが生まれてからは、さすがに別行動とはなりませんでしたが、結婚生活三十年に差しかかり、人間的に丸くなったはずの妻も私も、子どものいないところでは“素”に戻ってしまうところは、まだまだ修行が足りないのかもしれません。

私は、この数年間で生活スタイルが変わったことから、料理や食文化に関する考察を深めることに関心を持つようになりました。

もっとも、栄養学や料理研究といったものではありません。地域ごとの食材の活かし方や生活の中での食事のあり方を知ることで、我が家の食卓に並ぶ料理をバージョンアップさせることが目的といったところでしょうか。これをライフワークと言えるのかはともかく、家族に迷惑をかけない範囲で、自分の趣味として深めていければ楽しそうな気がします。