和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

キャリア採用

私の会社の人事部は非常に権威的なところがあって、自分のところの部署には中途採用者を配属させることはほとんどしてきませんでした。ほとんどの部員は入社以来人事畑で“純粋培養”された社員です。十年近く前に、ダイバーシティ推進グループを立ち上げた際、そのグループリーダーにキャリア採用で入社した女性管理職を抜擢しましたが、彼女はいわば“例外”であって、それ以降、配置換えで人事部に異動する社員は出てきていません。

社員は入社時に“職掌”が決められ、基本的のそれがついて回ります。若いうちはジョブローテーションで二年から三年周期でいろいろな部署を回り、職掌も変わる可能性がありますが、「人事」の職掌がつけられた社員が他の職掌に転換となることはあっても、その逆はありませんでした。

ところが、最近になって、人事部内でも人材の社外流出が目立ち始め、これまでの伝統を守り続けることが困難になってきたようで、他の部署から人事への職掌転換を認めるようになりました。

もうひとつ、人事部が手放さないものに採用権限がありました。OB訪問に他の部署の社員が駆り出されることはあっても、新卒採用、キャリア採用ともに人事部が全てを掌握してきました。欠員補充が必要な部署は、最後の役員面接の際に担当役員が同席することしか認められませんでした。

この採用権限も、自分のところの人手不足の影響で人事部は手放さざるを得ない状況になりました。今年に入ってから、 - 人事部は“実験的に”と言っていますが - キャリア採用の募集をアウトソーシングし、書類選考から一次面接までは人材を必要とする部署が直接行なうことになりました。

私の部署でも、早速キャリア採用に乗り出し、私と課長とでこの二か月の間、数十人の書類選考と一次面接を行ってきましたが、未だ二次面接をパスした候補者は出てきません。

募集部署が“一緒に働けそうな”人材を見つけても、人事部のお眼鏡に適わなければ合格になりません。キャリア採用がなかなか進まないのは、会社が自らの敷居を下げられないのが原因なのでしょう。

ともあれ、これまで人事部任せだった人手不足の手当てを自分たちで打開できるチャンスを手に入れられたことは大きな変化です。

キャリア採用の応募者は少なくありません。最終的にそれぞれの部門が採用権限を持てるようになれば、案外早く人手不足解消の目途が立ちそうな気がしました。もちろん、人事部の壁を取り除ければ、の話ですが。