和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

変化する人生観

異動の打診

今年に入ってから二度、異動の打診を受けました。子会社の管理職のポジションです。四月の“大異動”まであと一か月余りとなりましたが、人繰りがつかないとの噂を知らない社員はいません。

 

昨年も何度か異動の打診を受けた私でしたが、すべて断り続けてきました。かつて人繰りを考えなければならないポジションにいた私としては、上司の苦労は手に取るように分かります。しかし、今の私の頭には「会社のために」という思いはありません。

 

自分の時間と家族のための時間。それを確保できている今の状態が私にとっては最善の選択だと信じています。ほんの数年前まで仕事を理由に家族のことを後回しにしてきた私ですが、今は、仕事のために貴重な時間を殺がれることを自分の中で正当化できません。

 

会社は、「私の家庭の事情は最大限考慮するから」、異動の話を受けてくれと言います。その口約束が全く意味のない甘言だということは、三十年もこの会社に勤めてきた私が一番よく知っています。

 

変化する人生観

私は五十代を人生の折り返し地点で、そこから先はこれまでの人生の答え合わせをしていくものだと考えていたことがあります。仕事、結婚生活、子育て - 自分の蒔いた種がきれいな花を咲かせているのか、萎れてしまっているのか、それを見届けるのが残りの人生なのだと思っていましたが、どうもそうではなさそうです。

 

自分にとって都合の良い過去も都合の悪い過去も、それを背負うのは自分しかいません。もし、自分が今までの生き方に疑問を感じたなら、そこから仕切り直しする以外にありません。リセットはできないのです。

 

仕事のために切り売りしてきた時間はお金に姿を変えましたが、そのお金で時間を買い戻すことは出来ません。しかし、ここから先、自分が死ぬまでの時間をどう使うかは自分で選ぶことが出来ます。

 

人生観や仕事観は、自分の置かれている状況で変化します。それらに正解はありません。私が正しいと思っていることが、数年後になって、やはり正しかったと思えるのか、間違いだったと気づくことになるのか、それは誰にも分かりません。自分で納得しながら生きていくしかないのです。