和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

楽しみな入浴時間

寒い季節、入浴時間は私の楽しみのひとつです。少しぬるめのお湯に肩まで浸かって雑念と戯れているうちに体の芯が温まってきます。以前は肩こりに悩まされていましたが、ゆっくり湯船に浸かるようになってからはそれもだいぶ改善されました。

 

かつて、日々仕事に追われていた頃は、お風呂の時間をもどかしく感じていました。自分だけの、リラックスできる時間のはずなのに、シャワーと一緒に頭の中の考えが流されてしまいそうな感覚に襲われ、カラスの行水で入浴を済ませると、次の日の会議の資料に目を通したり翌週の仕事の段取りを考えたりと、気が休まる暇のない生活を送っていました。

 

心にゆとりがなければ、気を休めることもできず、ますます心のゆとりを失ってしまう – そんな悪循環のうちに、本来楽しいひと時のはずの入浴や食事が面倒で気が重いものになっていました。

 

気が休まらない毎日 – 今だから当時の自分が分かるのですが、その最中の私は、不安や焦燥感に付きまとわれていることをはっきりと自覚していなかったのかもしれません。客観的に自分の置かれている状況を見るゆとりすらなかったのです。

 

仕事のない週末でも“気が休まらない”。翌週のために体力を温存しておきたいと無意識に考えていたのでしょう、何をするのも億劫で、せっかくの自分時間を無為に過ごしていました。

 

今が暇なわけではありません。自分の趣味や家のこと、やりたいことややるべきことはたくさんあって、地球がもっとゆっくり回ってくれればいいのにと思います。

 

それでも、今の忙しさは、自分にとって気が休まる忙しさなのです。忙しいのに気が休まるとは矛盾しているかもしれませんが、他人時間に縛られない忙しさは心の疲弊を伴いません。

 

だから、一日の疲れを癒す入浴時間を楽しめるようになったのだと思います。