和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

娘のホームシック

無駄遣いは授業料

私たちの娘二人には、就職してからある程度の生活費を家に入れさせています。それ以外は自分が自由にできるお金です。お金が足りないと不満を口にする娘たちに、妻は、せめて小遣い帳くらいはつけるように言いますが、娘たちには馬耳東風。

 

娘たちからすれば、やりたいことに対して給料が追いついてこない状態なのでしょうが、若いうちはそんなものでしょう。

 

振り返ってみると、結婚する前までの自分自身のお金の使い方は無駄が多いものでしたが、当時の私が自分なりに考えて使ってきたお金は、全て自己投資と信じていました。

 

娘たちにしても、何年か先になって、今夢中になっているものが色褪せて見えることがあるかもしれませんが、実際にお金を使ってみなければ、自分の心を満たすものとそうでないものは分からない - 後知恵ではありますが、私はそう考えています。若い頃の無駄遣いは授業料なのだと思います。

 

ひとつ屋根の下で暮らしていても、親だからと言っていつまでも子ども扱いしていては、娘たちはいつまでも子どものままです。

 

親としては、娘たちに何かと口出ししたくなりますが、親の説教が逆効果なことは、妻も私も身に覚えがあります。親の過干渉に嫌気がさして家を出て行かれるよりは、娘たちを信じて見守って巣立っていくのを待っている方が親としての精神衛生上好ましいことなのだと、私はそう思うことにしています。

 

娘のホームシック

子どもの頃から成長を見守ってきた親の目には、依頼心の強いのんびり屋の長女に対して、次女は我が道を進むタイプに映ります。二人でいる様子からは、どちらが年上か分からないくらい下の娘はしっかり者に見えます。

 

あの子は自分たちが思っているよりも早くに親元を離れてしまうに違いない。妻と私はよくそんな話をしたものです。

 

先日、娘が一週間足らずの国内出張に出かけることになりました。これまで家族旅行や友人との旅行を楽しんできた彼女でしたが、一人旅は初めての経験でした。ましてや遊びではなく仕事です。

 

出発前から気が乗らなさそうな娘は、出張二日目にして – 妻曰く - ホームシックにかかってしまいました。宿泊先のホテルに帰ってきても、誰も自分を労ってくれるわけでもなく、仕事の愚痴をこぼす相手もいない。たかがそれだけのことですが、娘にとっては心細さや寂しさから、早く家に帰りたいと“べそをかきながら”妻に電話してきたそうです。

 

なんとも子供じみた話に、私は、娘が帰ってきたら揶揄ってやろうかと思いましたが、妻からは「内緒の話だから」と釘を刺されているので、これは妻以外誰も知らない話になっています。

 

大人ぶっていても、まだ子どもの部分が残っているのだとしたら、普段太々しく見える下の娘も、案外かわいいところがあるものだと、親としては妙に安心してしまうのでした。