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エンゲージメント

人事制度改革の目玉

ここ数年、社内でよく聞かれる言葉のひとつが「エンゲージメント」です。もちろん、婚約や雇用契約という意味合いではなく、会社に対する社員の忠誠心や愛着、仕事への思い入れや熱意といったところでしょう。

 

社員のエンゲージメントの向上を図るための人事制度改革 – そんな話が今年の春先から耳にするようになって、先月から今月にかけて社員向けに何度か同じ内容の説明会が行われました。

 

今回の人事制度改革の“目玉”は、端的に言えば給与体系の見直しです。人事考課や昇格・降格の結果としての給与にメリハリをつけることで、社員の仕事に対する取り組み姿勢や会社への愛着が向上する - 会社がそう判断したのでしょう。

 

それにしても、リテンション(人材の確保)すらままならない状況で“エンゲージメントの向上を図る”というのは、順番が違うのではと感じたのは私だけではないはずです。

 

問題山積み、とりわけ人材不足の解消が喫緊の課題の会社にあって、給与体系の見直しを行なったところで、疲弊した現場の活力が蘇ることはあまり期待できません。

 

閉塞感

案の定、説明会では出席者から批判的な質問が多く出されました。数回の説明会での質疑応答はまとめて社内イントラネットで公開されましたが、会社からの回答のほとんどは、質問者が聞きたい答えをストレートに返すものではありませんでした。

 

「人事考課の透明性は如何に確保するのか」、「人手不足対策と業務負荷軽減が先ではないか」 - 毎年行われる社員の意識調査で挙げられ、一向に解消されない“会社に対する不満”、その対策が講じられることなく給与体系だけを見直したところで、多くの社員は納得しないでしょう。

 

「より一層公平感のある評価制度を検討中」、「時間外労働時間の減少に努めている」、「中途採用を積極的に推し進めている」といった会社の回答は、的を射たものとは言えません。

 

会社がこれまで無為無策だったとは言いませんが、職場に漂う閉塞感は年を追うごとに重くなっている気がします。評価や給与といった待遇の見直しでは社員の不満を払拭できないことは、職場で同じ空気を吸っていれば嫌でも分かるものです。

 

残業時間の削減、有給休暇の消化率向上、産休・育休の取得率向上 - 統計上の数字はホワイト企業のものですが、組織目標を何とか達成している社員はギリギリの状態なのです。

 

どこの部署も欠員が出ている中で、それでも表面上は業務に甚大な支障が生じていないのは、仕事を家に持ち帰ったり、休暇中に仕事をしたり、あるいは、残業手当のつかない幹部社員が ‐ その是非は別として ‐ 裏で努力しているからで、社内でそれを知らない者はいません。

 

できないことを「できない」と言えない社内の雰囲気、業務の効率化や合理化を現場に丸投げする経営陣に対して信頼や愛着が湧くことはありません。目の前にぶら下げる人参を大きくしたところで、社員のモチベーションが高まることはないのです。