和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

モチベーションとエンゲージメント

企業価値と行動指針

日本語だと迫力に欠けることを、さも重要そうに見せようとする際に外来語への言い換えを使うことがあります。社内で最近流行っている言葉は「エンゲージメント」です。その言葉自体に斬新さがあるわけではありませんが、誰かが使い出すと社内文書の至るところで同じ言葉が現れ始めます。

 

困ったことに、社内の流行語になっても言葉の定義がされていません。ある者は「社員のやる気」だと言い、またある者は「仕事への関与度」だと言います。

 

何となく分かったようで分かっていない状態にしたいためにわざとカタカナ語を使用しているのではないかと勘繰ってしまうほど、使う側、受け取る側がそれぞれ勝手に解釈していて共通認識が持てていません。

 

私の勤め先では数年前から企業価値向上のための行動指針を浸透させる活動が盛んです。企画部門が啓蒙活動を行なう際によく使うのが「モチベーション」と「エンゲージメント」なのですが、「仕事への意欲」とか「仕事への自主的・積極的な取り組み」と言った方が理解されやすいはずにも拘わらず、これらの言葉には拘りがあるようで、以前から使い続けています。

 

元々は、社員の行動指針をボトムアップ的に作り上げることが始まりでしたが、それも、さらに遡れば、経営陣から企画部門に下った指示が発端でした。

 

各部署の社員で組成されたワーキング・グループは、決して暇ではありませんでしたが、行動指針の策定作業に真摯に取り組みました。ユニークで力強さを感じさせるキャッチワードの候補が社内で公開され投票も行なわれました。

 

ところが、細かな経緯は分かりませんが、経営陣から難癖がつけられ、社外のアドバイザーを招聘されたのです。

 

結局、大騒ぎした割には、出来上がった行動指針はこれまで数十年守り続けてきた社訓を、耳当たりの良いスローガンに書き換えただけのものに終わりました。

 

費用対効果を考えたら、コンサルタント会社に高い手数料を払うほどの代物ではなかったのですが、そこそこ名の知れたコンサルタント会社が監修したというだけで、役員会では文句も出ずに承認されたというのですから、最初からその会社に丸投げすれば無駄な労力をかけずに済んだことでしょう。

 

やる気を出せ

行動指針は作って終わりではなく、その後、どのように社内に浸透させるかの方が重要です。行動指針の浸透による企業価値の向上 - しかしながら、最大公約数的で当たり障りのない行動指針は、違った見方をすれば、多様な考え方をまとめ切れなかった妥協の産物です。ある若手社員がこう言っていました。「当たり前過ぎて“刺さらない”」。 

 

私はその言葉に反論出来ませんでした。精神論的で抽象的な言葉を掲げるだけで、社員の仕事への熱意や関与の度合いが高まるわけではありません。掛け声だけでは人は動かないのです。

 

過去の記事で何度か触れていますが、会社のミッションやビジョンが明確でなければ、社員は自分自身の将来像を描き目標を定めることが出来ません。また、経営陣は、企業価値が向上した先の状態目標を示せていません。肝心なところが欠けているのに、「やる気を出せ」、「気合いを入れろ」と言われても力が入らないのは無理もないことです。

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