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社風を見直せない社風

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意欲を殺ぐ社風

昨年の始めのことでしたが、私の勤め先で「企業文化の構築」の話が持ち上がりました。経営陣が新たな経営方針や行動指針を示すのかと期待していましたが、社員全員で行動指針を作るよう上から指示があり、これぞ我が社の社風らしいと思ったものでした。

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その後、企画部門が中心となって – どのような基準かは定かではありませんが – 社内の主だった部署からワーキンググループのメンバーが選ばれ、作業が始まりました。

 

また、時たま思い出したように、ワーキンググループから途中経過を報告するメールが社員一斉に送られてくることもありましたが、私の部署から駆り出された若手社員 – 彼は昨夏、転職してしまいましたが – からは、何度か担当の役員に素案を挙げたものの、突き返されて作り直しをしているような話を聞きました。

 

恐らく、私に限らず、多くの社員はそのことを予想出来たと思います。出された料理に文句はつけるけれども、何が食べたいかは言わない。工夫が足りないと言うものの、自分で料理を作ろうとはしない。そうやって、意欲を殺がれていく料理人が今のワーキンググループのような気がします。私は、過去に様々な局面で、同じことの繰り返しを目にしてきました。

 

人離れのわけ

就職活動で会社選びをする際、仕事の内容や年収、福利厚生は重要な判断材料ですが、同様に企業文化や社風も軽視出来ないものです。そこで働くモチベーションを維持するために欠かせない要素なのでは無いかと私は思います。

 

自分の個性にあった職場なのか、自分が成長するための環境が整っているのか、社員同士の関わりや上司との関係は自分の価値観と合っているのか。それらの土台となっている、企業文化や社風は、実際にその中に入って見なければ知りようがありません。

 

期待に胸を膨らませて入社しても、しばらくして、“この会社は自分に合っていないのではないか”と違和感を覚えたとしたなら、突き詰めれば、企業文化や社風にその原因があることが多いのだと思います。

 

働く側にとっては、違和感を抱いたまま仕事を続けるメリットはありません。選択肢の多い時代、選ぶ権利は、企業側と働く側が対等に持っているのです。

 

職場では、数年前から若手・中堅社員の退職が目立ち始めました。これは過去に何度か記事にしました。もちろん、労働力の流動化が進んだ結果とも言えなくはありません。

 

しかし、退職者の抜けた穴を補充するための中途採用が思うように進んでいないこと、そして、折角入社してきてくれた中途採用者が定着していないことを直視すれば、人材流出の原因が、世の趨勢以上に、会社側にあることは疑いようの無い事実であることが分かります。

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そのような中で、経営陣もようやく企業文化・社風の見直しの必要性を理解し始めました。

 

本当に改めなければならないもの

企業文化の構築 - 実は、その見直しなのですが - は、会社のミッションステートメントを改め、その実現のための“会社が獲得を目指す”企業価値を定めることが含まれます。そして、その方法は、有志社員を中心としたワーキンググループによる“社員の思いを汲み上げた”素案を基に、経営陣が最終決定すると伝えられています。

 

もっとも、企業文化や社風とは、会社が長年の活動を通じて内発的に出来上がった風習を代々の経営陣や社員が受け継いできたものです。見直す方向性や度合いは、高度に経営哲学に関わってくるもので、やり方を間違えれば、社員が混乱することにもなり兼ねません。

 

社員全員参加型。聞こえは悪くありませんが、方法論からして今の我が社の社風を土台にしているのは、一歩踏み出せていない感は否めません。全員が責任を負うと言うやり方は、大体が責任の所在が曖昧になり、誰も責任を取ろうとしないものです。

 

会社が目指すべき道を示すのは経営陣の役割のはず。もし、社員からの批判が上がれば、それを受け止め、説明責任を果たすべきは経営陣のはず – なのですが、今の進め方では、結局、下の人間が上げて来たものを上の人間が批判して骨抜きにする結果に終わってしまうのではないかと感じています。

 

一体、企業文化の見直しで、会社は何を目指そうとしているのでしょうか。何故、ミッションステートメントを見直す必要があるのか。何故、その土台となる企業価値を改めなければならないのか。経営陣は、今まで目を背けて来た議論を放置して、企業文化・社風を改めることが出来ると考えているのでしょうか。

 

事業の低迷、自己都合退職者の急増。一番危機感を抱いているのは、現場で働いている社員です。

 

これまで、辞めて行った社員を裏切り者呼ばわりし、“社風に合わせられなかった”全ての責任を彼ら・彼女らに押し付けてきました。事業の低迷も“取り巻く環境”のせいにしてきました。

 

本当は外部環境では無く、過去の教訓を活かせず、失敗にふたをし続けてきた結果です。それが分かっていれば、会社の進むべき道を改めるのは、経営陣の役目以外にありません。企業文化を改める必要があるなら、自分たちで素案を作り、社員に示せば良いだけのこと。社員からの批判には真摯に耳を傾け、そこから経営陣と社員が一丸となって共同作業を始めることが出来るのだと考えます。

 

社員に素案を示させる – 常に下の人間の持ってきたものを批判することしかしてこなかった経営陣は、自分たちが先頭に立って行なったことが批判の的にされることを恐れているのでしょう。それこそが、改めるべき社風なのだと気づかないのでしょうか。