私の一年下の後輩が単身赴任先で亡くなりました。
私が海外駐在から帰国したのと入れ替わりに彼は地方の事業所に転勤となりました。若い頃は、気が向けば仕事終わりに居酒屋をはしごするような間柄でしたが、お互いに飲み交わすタイミングを逸したまま十五年余りが過ぎていました。
通常、単身赴任は三年から四年が目安なのですが、彼が家族と離れて暮らすようになってからすでに八年が過ぎようとしていました。人手不足から、彼の後任がなかなか見つからなかったためです。
たまのメールのやり取りでは、本社に戻りたい彼の気持ちが伝わってきました。彼からの最後のメールは去る八月に届いた業務連絡でしたが、文末に短い夏休みを取って帰京することと、まだ自分の後任が決まらない愚痴が書き添えられたものでした。
彼の死因は分かりませんが、金曜日の終業後から週末の間に、借り上げ社宅のマンションで亡くなったようです。
あと数日すれば仕事納め。彼が、年末年始の短い休みを家族と一緒に過ごすことを楽しみにしていたことは想像に難くありません。
今更、“タラレバ”の話をしても仕方のないことですが、もし、彼の単身赴任が長引かずに今頃家族と一緒に暮らしていれば、命を落とさずに済んだかも知れません。
ご家族からしてみれば、十年近くも別々に暮らしてきた挙句に、夫であり父である彼の最期を看取ることができなかったことはさぞ悔しいかったことだと思います。