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老後の前のハッピーアワー

人生の総まとめ

再雇用嘱託

私が就職した頃、会社の定年は五十五歳で、その後二年間は再雇用嘱託として働くことができました。二十代の私の目からは、再雇用嘱託の人たちはほとんどが時間を持て余しているように見え、私も自分の仕事人生の最後はそうなるのかと思うと一抹の寂しさを感じたものです。

 

今は六十歳定年の後、最長で六十五歳まで嘱託として働くことができます。長く働ける環境が整っていることは、仕事人生に生きがいを感じている人にとっては喜ばしいことです。

 

人生100年時代」だからと言って健康寿命が格段に延びるとは思いませんが、六十代は、第一線からは退くとしても、働くのが当たり前の世代になるのでしょう。ただし、再雇用後、現役時代に感じられた達成感ややりがいが得られるかというと、それは別の話です。

 

会社人生は人生の一部

私の勤め先では、定年が延長された後、再雇用嘱託の人たちはかつての所属部署でアドバイザー的な役割を任され、現役時代に培ったスキルや経験を活かして、管理職の参謀役や後進の指導役などに活躍の場を見出すことができました。

 

しかし、シルバー人材の活躍の場は、残念ながら長くは続きませんでした。一般職の女性社員の総合職への転換や慢性的な人手不足から、再雇用嘱託の人たちは、高度な専門知識を有している場合を除き、定型業務に回されるようになりました。

 

現役時代の役職や実績は関係ありません。多くの部下を率いてきた部長職であろうと、裏方で部署を支えてきた一般社員であろうと、定年を迎え再雇用された後に任される仕事のほとんどは雑用です。

 

もし、私が、定年後、自分の知見を活かすことができずに雑務のみを任されるようになったとしたら - 与えられた仕事の中に私がやりがいを見出せれば仕事を続けられるのだと思いますが、その自信は私にはありません。

 

たとえ、職場の人間関係に恵まれ、そこそこの収入が保証されているとしても、それだけでは仕事を続けるモチベーションを維持できないと思います。

 

五年間の再雇用期間が用意されていても、嘱託期間満了前に会社を去って行く人が少なくないのは、仕事にやりがいを見出せなくなったからなのでしょう。

 

これからさらに定年が延長されたとしても、死ぬまで会社で働き続けるわけには行きません。定年制度のない会社も存在しますが、私の勤め先はそうではありません。いずれは、会社人生は終わりを迎え、肩書のない人間として歩んでいかなければなりません。

 

会社人生の、その先の人生に生きがいを見出せるのか。私の人生もまもなく総まとめの時期に移っていきます。