和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

多様化と平準化(2)

活躍支援の重荷

「働き方の多様化」への動きの中で女性の活躍支援を推し進めようとした会社でしたが、制度を構築する側の先入観が払拭されなければ、働き手の選択肢を狭めてしまうことになります。先入観とは、すなわち「一般職の女性社員は皆活躍の場を求めているはず」という考えですが、実はそうではありませんでした。

 

私の勤め先で行なわれた女性社員の活躍支援の取り組みは、会社が期待したほどの効果は得られませんでした。一般職から総合職に転換となった女性社員の中からは、職責が負荷となって退職する者が出てきました。

 

男女問わず、会社で働く全ての社員が皆一様に上昇志向を持っているわけではないのです。自分のペースで働き、自分のペースでプライベートを楽しみたいと考える人にとっては、会社からの“活躍支援”は重荷以外の何物でもありませんでした。

 

そもそも、女性社員の活躍支援と言っておきながら、未だに産休・育休の取得が昇格査定時のマイナス評価要素となっているのを見れば、会社がどこまで真剣に女性に活躍してもらいたいと考えているのか良く分かりません。

 

また、同時期に推し進められていた「シルバー人材の活用」に至っては、一般職の廃止や若手社員の退職に歯止めがかからない状況から、定年後の再雇用嘱託の社員が事務補助的な仕事に回されることとなり、嫌気の差した嘱託社員は契約期間満了を待たずに会社を去っていくケースも散見されました。私がとてもお世話になった先輩もそのひとりでした。先輩は自分の活躍出来る場所がなくなったと嘆いて辞めて行きました。

 

定年後に、引き続き仕事を続けたいとの思いから再雇用の道を選んだ先輩方の多くは、自らの知見を後進に引き継ぐことをやりがいに感じていた人が多くいたと思います。それが叶わなければ会社に残る意味はありません。

 

都合の良い社員

それぞれの社員の考え方 - 仕事に対する思い入れや人生設計は様々で、それらを広く受け入れようとするのが働き方の多様化への取り組みだと思うのですが、会社は、一般職の女性社員に“活躍の場”を押し付け、一方で、仕事熱心な嘱託社員からは活躍の場を取り上げてしまいました。そこには、本人の思いに対する配慮とは違う、女性社員は活躍の場を欲している“はず”、再雇用嘱託は、どんな仕事でも文句は言わない“はず”、との先入観がありました。

 

会社がそれぞれの社員の価値観に目を向けず、都合の良い枠をはめようとするのは多様化とは逆行する、悪い意味での平準化なのですが、社員はそのような会社の動きとは関係なく多様な働き方・生き方を求めていて、それはもう止められません。「会社にとって都合の良い社員」は減ることはあっても増えることはないのでしょう。