和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

やりがいのため、お金のため (2)

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とん挫したシルバーシンクタンク

来月から一緒に仕事をすることになったMさん。私が余計な先入観を抱いていたことを詫びた際にMさんが“仕方の無いこと”と言ったのは、所在の無い再雇用嘱託が多い現状を誰もが知っているからでした。

 

若手・中堅社員の自己都合退職が増える一方で定年後に嘱託で残る社員が増えていることから、社員の年齢構成はとても歪なものに変わってしまいました。

 

人手不足を訴える部署が多くある中で、何故、再雇用嘱託者が戦力になっていないのかとの疑問があります。私が人事委員会のメンバーだったのは3年ほど前の話ですが、当時と今とで、それほど状況は変わっていないでしょう。

 

それよりも少し前に、シルバー人材で構成されたシンクタンク創設の“噂”があり、一時その話で社内が盛り上がりました。しかし、ふたを開けてみれば、一般職の女性社員の総合職への一斉転換を機に、その穴埋めをシルバー人材で行う構想であることが分かりました。

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結局この構想は、当の嘱託社員から大反対が起こったため、現実のものとはなりませんでしたが、この時に、“事務補助は派遣社員の仕事、嘱託は経験を活かした仕事を行なう”、と言う不文律が出来てしまいました。

 

しかし、一部の嘱託社員の思いとは裏腹に、シンクタンク創設は空中分解してしまいました。その数の割に、シンクタンクを作ることに賛同する嘱託社員が予想をかなり下回ったためです。

 

先の人事委員会では、シンクタンク構想がとん挫した後、余剰化しつつある嘱託社員を画一的に扱うのでは無く、本人の技能や意欲も踏まえて、グレード化する案も浮上しました。これは、出席していた委員から、再雇用後の嘱託社員の中で、能力・意欲のレベルの開きが大きいとの指摘があり、そこから派生した議論でした。

 

結局シルバーシンクタンクは、主役になるはずだった嘱託社員の団結力が欠如していたことから実現には至りませんでした。

 

嘱託のモチベーション

定年を迎えた社員の多くは再雇用嘱託の道を選びます。Mさんのように技術職であれば、自分の知見を若い人たちに継承したい、有能な人材を育てたい、と言う思いがあるのでしょう。あるいは、お子さんの教育費や老後資金のためと言った現実的な必要性から働き続ける道を選ぶ人もいます。

 

しかし、一方で、仕事の目的を持たずに再雇用の道を選んでしまった人も少なからず存在します。個々の事情までは知る由もありませんが、就業時間中、特定のルーティーンワークがあるわけでも無く、“そこにいること”が仕事になってしまっている人々です。在宅勤務が主となっている現状、その人たちはどのような仕事をしているのか、上司が適切に業務管理出来ているのか、見当もつきません。

 

人事委員会では、現場での人手不足を理由にシルバーシンクタンク創設を支持しませんでしたが、人手が足りないはずの現場では、嘱託社員を活用しきれていない – そんな現実がありました。

 

また、人事委員会のメンバーだった頃、私は、嘱託として働いている諸先輩方数名と話をする機会があったのですが、嘱託のモチベーション低下の要因は、給料の激減、立場の逆転、そして、業務内容のレベルダウンに集約することが出来そうです。

 

これら全ては、定年退職し再雇用される時に分かっていることですが、いざその立場になると、現役時代のプライドが現実を受け入れることを邪魔し、不満が湧き上がってくるのだと思いました。定年前、私の目から見ても冷静な判断力のある先輩でさえ、手取り収入が大幅に減り、かつての後輩から指示された仕事をこなすうちに意欲を失ってしまい、再雇用期間半ばでフルリタイヤしてしまいました。

 

定年を迎えれば、現役の社員としてはそこでお役御免となります。嘱託で仕事をするのは、それまでの業務上の実績や経歴をリセットした上で、それでも残る自分の強みとしての知識や経験をどのように仕事に活かせるかが存在価値になります。その点では、再雇用ではあるものの、意識としては、別の会社への再就職くらいに考えておいた方が無難だと思います。

 

生きがいにつながるもの

再雇用の機会を途中で放棄してしまった人を蔑むつもりはありません。私も同じ立場に置かれたら我慢できなくなってしまうかもしれないからです。

 

しかし、上述のとおり、定年を迎えても、自分に何か“売り”の技能があれば、それを梃子に再雇用での活躍の場を見出すことが出来ます。

 

同じ再雇用でも、自分の持っているものを咲かせるための場を求めるのと、取り立てて何のセールスポイントも無いけれど、収入源は確保したいと言うのでは、働く意味合いが全く違います。

 

前者は仕事を通じてまだまだ生きがいを得る可能性がありそうです。後者はお金を稼ぐことが目的になってしまいますが、その場合、別の生きがいが必要になるのではないでしょうか。

 

もし、仕事以外の趣味やライフワークなど、没頭できる何かを見つけることができれば、あるいは、すでに持っていれば、仕事は仕事と割り切ることも出来ます。つまらないプライドに拘って会社を飛び出すことも無いのかもしれません。