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危機意識と緊張感

意識調査

社員の意識調査。私の勤め先では、たまに思い出したように意識調査を行ないますが、それが何にどのように活かされているのかは分かりません。

 

最近、意識調査を行なった主管部から各部に対して、回答結果をたたき台にしてディスカッションを行なうよう要請がありました。そんな調査に参加したことすら忘れてしまっていました。この手の意識調査がこれまで何回行なわれたか覚えていませんが、調査結果に基づいて部内で議論せよと言われたのは今回が初めてだと思います。

 

意識調査の設問は主として“危機意識”と“意識改革”についてでした。会社そのもの、そして会社を取り巻く事業環境についての危機意識、そのような事業環境の変化を踏まえた意識改革が出来ているか。各人から見て職場や経営陣が危機感を抱いているように見えるか、意識改革に取り組んでいるように見えるか。自分自身はどうか – そんな設問に対する回答結果が公表されました。

 

しかし、回答結果は、文字通り従業員と役員の回答結果が円グラフで示されているだけで、主管部の分析も評価もありません。グラフからは従業員と役員との間で意識のギャップが見て取れるのですが、それが何に起因しているのか、せめて考察くらいはしても良いのではと思いましたが、きっと差し支えがあるのでしょう。

 

そして、主管部からのリクエストは、この結果を踏まえて、“今後どうすべきか”を職場で議論してほしいと言うことなのですが、そもそも、会社として従業員に危機感を持って仕事に臨んでほしいのか、あるいは、従業員の危機感を払拭すべきと考えているのかが見えません。方向性の無い議論では時間つぶしにしかならないため、私は部長に、各部でのディスカッションの前に主管部に論点の整理を提言するように促しました。

 

それに対する部長の言葉は、主管部とのやり取りの時間が無ので、部内で方向性を決めればいいのでは、と言うものでした。主管部からの要請の趣旨が分からなければ、期待しているような議論が出来ない可能性があると説明したのですが、あまり関心が無い様子。挙句の果てには、各部員から忌憚の無い意見を出してもらうために、自分は議論に加わらない方が良いとまで言う始末です。

 

一方、隣りの課の若手・中堅社員は部内でのディスカッションに乗り気のようで、意識調査の結果を分析してみるとまで言っていました。

 

会社や会社を取り巻く環境について抱いている危機感と言う点では、若手・中堅社員の方が役員や管理職と比して一層切実なのではないかと感じました。

 

緊張感無き危機感

調査結果では、「職場や経営陣に危機感があるか」との問いと、「自分自身が危機感を抱いているか」との問いに対する結果が示されていましたが、そこから読み取れるのは、各人が感じ取っている会社自体の危機意識以上に、個人としての危機感が高いと言うことでした。裏を返せば、それぞれが思っている以上に危機意識を持っている人間が周囲にいるわけで、お互いの危機感を共有することだけでも部内でのディスカッションの意義は十分あると感じました。

 

ただ、私が感じる一抹の不安は、このディスカッションを経て各部から出された提言が経営陣への質問状に等しいものになると言うことです。

 

「今後どうすべきか」 - その答えを経営陣として従業員に示すことをせずに、“まず君たちが考えろ”と言う姿勢 – そんなつもりは無いのかもしれませんが – に不安を感じる社員も少なくないはずです。

 

各部から上がってきた様々な意見や提言を受け、それに対して経営陣が明確な考え出せなければ、社員からの信用を損なうことにもなり兼ねません。もっと意地悪な言い方をすれば、社員の経営陣に対する不信感がすなわち会社に対する危機感を表しているのかもしれず、そうであれば、経営陣に対する信用などすでに失いかけていると言わなければなりません。

 

終了事業の総括然り、人事制度の改革然り、ボトムアップ型の提言がどこかで骨抜きにされて経営陣に届く様を見て来た人間にとって悪い予感しかしないのですが、それが私の杞憂に終わることを祈るばかりです。

 

実際に、今回に意識調査では役員にも同じ設問が用意されていましたが、回答からは、従業員以上に個人の危機感が高く、それに比して、会社全体の危機感が低いと思っていることが分かりました。

 

しかし、従業員以上に危機感を覚えていながら、それが社員に伝わってこないのは、危機感を抱いている振りをしているだけなのか、あるいは、緊張感とは無縁のところで仕事をしているからなのかもしれません。