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老後の前のハッピーアワー

人間関係のトリミング

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付き合いを断って身軽になる

仕事上の人間関係と異なり、プライベートの生活では、渋々付き合わなければならない相手はそれほど多く無いのかもしれません。

 

しかし、親類縁者や隣人、子どもの学校関係者など、厄介でも付き合わざるを得ない関係は存在するものです。好き好んで周囲と波風を立てたいと言う人はいないでしょうが、こちらがどれだけ注意を払っていても、トラブルメーカーの方から近寄って来られたらどうしようもありません。

 

学生の頃の私は、親戚付き合いや友人との付き合いは避けて通れないものなのだと自分に言い聞かせていました。当時はまだ、自分の心にそのような“付き合い”を受け入れる余地があったのだと思います。また、人付き合いの大切さを親から教え込まれていた影響もあったのでしょう。

 

しかし、年を追うごとに、人付き合いの煩わしさが自分の胸の中で増幅されていきました。飲み代を借りっぱなしで返そうとしない友人や、金の無心をする時だけ連絡を寄越す親戚等々。借金の取り立てや、借金の依頼を断ることを、角を立てないように気を遣いながら行なっていましたが、そのような配慮も我慢の限界に達しようとしていたのでした。

 

仕事上の話であれば、付き合いを断ってしまっては支障があるからと、表面上良好な関係が続いている振りをする努力が必要になります。他方、プライベートでは、嫌な思いを押し殺してまで維持しなければならない関係はほとんど無いでしょう。

 

ある時期に私は、惰性でつながっていた人間関係を“清算”することに決めました。それまで適当にあしらいつつも、古い付き合いだからとか、親戚だからと言う理由で保っていた関係を断つことによって、気持ちがすっと楽になりました。

 

私の母は、私が従兄との付き合いを断ったした時に、「親戚同士なのだから仲良くするように」と私を諫めました。親兄弟や親戚の類は自分で選ぶことは出来ませんが、関係を断絶することは出来ます。

 

人との付き合いで、相手を思いやる気持ちを忘れてはいけませんが、その相手が必ずしも自分に思いやりを持って接しているとは限りません。プライベートな人間関係では、どちらかが我慢を強いられる必要は無く、他者を都合良く利用することしか考えていない相手であれば、関係を断ってしまうのが自分の心の平穏のためには最善の方法だと考えます。

 

八方美人

勤め先や出身校を鼻にかける者がいます。前回の記事でも触れたとおり、自分の人脈の広さをひけらかす者は、それを利用して自分を大きく見せようとしているのです。自分の属している – あるいは属していた – 集団に権威性を見出そうとする人間は、所詮そのレベルでしかないのです。自らの人間性に自信があり、相手の本質的な部分に関心のある人は、肩書や経歴では無く、相手の物事の捉え方や考え方を知りたいと思うものです。

 

派閥に属する者の多くは、仲間意識を強め、それに縋る一方で、派閥外の人間を意識的、あるいは無意識のうちに排除したり見下したりしがちです。派閥を構成する面々の人間性は二の次で、“数”を力の拠り所として組織の中で幅を利かせることが最大の目的になっています。

 

私の勤め先でも学閥や派閥があります。どちらも、会社と言う大きな組織の中にわざわざ“村”を作って勢力を広げようとする点では似たり寄ったりです。もっとも、私のようにどこの派閥にも属さない人間は、疎んじられる一方で面倒な争いに巻き込まれずに済みます。余計な煩わしさとは無縁でいられることの方が私にとってはメリットなのです。

 

会社の中では、周囲の人間の協力がなければ仕事は前に進みません。しかし、学閥や派閥に飲み込まれてしまうと、自分に嘘を吐きながら生きて行くことにもなりかねません。村に属することで得られる安心感と引き換えに、時には自分の思いとは裏腹のことを強いられることもあるのです。私は、八方美人だと陰口を叩かれていることを知っています。それでもなお、誰からも中立的な距離を保ち、同僚や部下と良好な関係を維持しようとするのは、私なりのストレスを溜めないための手段です。

 

仕事上の付き合いは打算的なのです。社内で良好な関係を築く目的は、仕事をやりやすくするためです。そのために、“良い上司”や“良い部下”を演じているのだと思います。

 

かつての私だったら、全幅の信頼を寄せる上司がいれば、身を粉にして尽くしたと思います。しかし、こちらがどれだけ心酔した相手だとしても、あちらが自分を同じくらい気遣ってくれるとは限りません。仕事上のつながりは、どれだけ良好な関係を維持しようと、仕事の上の話です。私が、自分の上司とも部下とも良好な関係を保とうと努めるのは、いつか「ノー」と言う時が来るかもしれないからです。

 

仲良しクラブと会社は違います。“頼まれたら断れない”関係は、仕事の上では足を掬われることはあっても、役に立つことはありません。社内の人間との良好な関係は大切ですが、ウェットな関係であってはいけません。