和尚さんの水飴

老後の前のハッピーアワー

家族の危機管理

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やればできる子

パートナーとの共同生活や、子供を含めた“家族”としての生活を維持するとなると、自分自身の自律心だけでは足りず、家族を一つにまとめるためのリーダーシップが欠かせません。今の時代、配偶者や子供に指図するだけで、自分はふんぞり返って何もしない人間はリーダーシップがあるとは言えず、自ら率先して家族を牽引する姿勢が必要なのではないでしょうか。もはや仕事を言い訳に家事や子供の教育から逃げ通すことなど出来ない時代なのです。

 

家庭内での役割分担を考える時も、誰かに過大な負担がかかるようでは、やがて不満が爆発することになります。家族全員が公平に苦労を分かち合えるように配慮しなければ、いざと言う時に家族がお互いを信頼できなくなってしまいます。

 

コロナ禍は、私たちの生活スタイルを一変させました。行動の自由が制限されたことを始め、マイナス面を挙げればきりがありませんが、プラスの面もあります。我が家の場合、家族と一緒に過ごす時間が増えたことによるメリットは、夫婦や親子の会話が増えたこと、家族全員で家事に取り組む意識が一層高まったこと、そして、家族が今まで以上にお互いの健康状態を気にするようになったことです。総じて家族全員が、“家族であること”をより意識するようになったと思います。

 

私の勤め先の同僚や部下の話を聞くと、在宅勤務で家にいる時間が増えたことが、かえって負担に感じるようになったと言う者が少なくありません。会社が在宅勤務を推奨しているにも拘わらず、いろいろと理由をつけて出社している者は、それ以前から、夕食を外で済ませたりして家にいる時間を極力少なくする“努力”をしてきているようです。

 

今まで家事に積極的に参加してこなかった人間ほど、家にいる時間は苦痛なものなのでしょう。しかし、在宅勤務が一般化すれば、仕事のあり方のみならず、家族のあり方も変えざるを得ず、そこから目を背けることなど出来るはずがありません。

 

今までは、仕事が忙しいことを言い訳にして家事を避けてきた人でも、家族のあり方の変化に合わせて自分を変えていかなければ、やがて家族の輪から孤立してしまうことは目に見えています。

 

家族のあり方と言う点では、我が家の場合、娘たちにも小さな変化が訪れました。娘たちは、これまでも“それなり”に家事を手伝ってくれてはいましたが、まだまだ遊びたい盛りなので、親が指示した以上のことまでは気が回りませんでした。ところが、妻の病気の治療が本格的に始まってから様子が変わりました。

 

下の娘は、母親に聞きながら、食料品や日用品の買い出しを仕切るようになりました。予算や買い物をする曜日、そして“買い物当番”を決め、私や上の娘はその指示に従います。私は娘の言うとおりに仕事が終わった後に、娘と一緒に近くのスーパーに買い物に行きます。

 

上の娘は、平日は出社しているのでなかなか家事に参加できませんが、休みの日は率先して掃除や洗濯を手伝ってくれるようになりました。これまでは休日はだらだらと過ごしていたのが信じられません。

 

子供の自律心や家族の一員として協力する姿勢は、親があれこれと口うるさく言うよりも、必要に迫られれば自ずと芽生えてくるものなのかもしれません。

 

家族の危機管理能力

妻の病気は、娘たちにとって、自分たちもこの家を支える一員であることを気づかせる良いきっかけになったのだと思います。これまで、娘たちは生活を親に依存することが当たり前と思っていました。それは、金銭面のみならず、決まった時間に起こしてもらうことから、朝食、洗濯、掃除、全て“やってもらって当たり前”。もちろん、親が指示したことはやるのですが、そこまででした。毎日の生活を回していく意識が低いことと、家族の一員としてその役割を担う自覚がありませんでした。

 

そんな娘たちを見て、妻は口うるさく注意したものですが、私は妻に放っておくように言いました。自分の経験から、誰かに言われてやらされることは長続きしないと分かっていたからです。とは言いながらも、私としても、何か娘たちが自発的に動き出す良いきっかけが無いものか考えてはいたのです。楽天家の私は、娘たちもきっと、もっと積極的に家事に参加したいと思っているはず。ただ、気恥ずかしくて何かきっかけを欲しがっているのだろうと、良いように解釈していました。

 

娘たちの本心は定かではありませんが、ともあれ、春先からのコロナ禍と在宅勤務は、私たち家族にとって今の生活を自然に受け入れるための予行演習であり、とりわけ娘たちにとっては、家族への帰属をより意識する好機だったのだと思います。

 

危機管理能力と言うと大袈裟ですが、家族の誰かが大変な時期に一緒に支え合える関係を築くことは大事です。しかし、それは一朝一夕にできるものではありません。日頃の家族同士の関わりを通じて、お互いが大切な存在であることを確認し、家族が快適な生活を送るためには何をしなければならないのかを話合っておけば、いざと言う時に自分が出来ることは何なのか – 自分の役割 – が自ずと理解できるのではないかと考えます。