自分のための時間

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妻の悩み

新型コロナ騒動に伴う緊急事態宣言が出されて以来、妻は自宅待機となっていました。妻の仕事は在宅でできるものでは無いため、家にいてもやることがありません。有り余る時間で、読書やビデオ鑑賞、マスク作り、おやつ作りなど、在宅生活を満喫しているようでした。そんな妻ですが、6月1日から出社するよう会社から指示がありました。1週間前の話です。

 

その日から妻の様子がおかしくなりました。何をやるにもため息交じり。日中はぼーっとテレビを見て過ごしている時間が増えました。話を聞くと、在宅生活が思いの他充実していて、これが終わってしまうと考えると寂しくて仕方がないとのこと。

 

海外駐在から戻った後、妻が仕事をし始めたのは、日中誰もいない家にいるのがもったいないという理由からでした。しかし、今は私も娘もずっと家にいます。昼間は娘と一緒に昼食やおやつ作りを楽しみ、夕飯も家族全員で食卓を囲み賑やかに過ごします。この家族の輪から自分だけ抜けてしまうような疎外感が落ち込んでいる理由なのでしょう。

 

そのことを妻に話すと、“たぶん、そうだ”とのこと。自宅待機が始まった当初、「一日中家にいるなんて耐えられない」と文句を言っていた同じ人間とは思えない変わりようです。

 

妻は、こんな楽しい在宅生活は二度とやって来ないと言い、読書しながらうたた寝などせずにもっといろいろなことにチャレンジしておくべきだったと後悔していました。恐らく、時間を無駄にしてしまったことを悔やむ気持ちもため息の原因のひとつなのだと思います。

 

私は妻に、一日中テレビを見ていようと、惰眠を貪ろうと、全て自分の時間なのだから無駄ではないと話ました。誰かのために自分の時間を犠牲にしているわけでは無いのだから。

 

在宅生活ロス?

かく言う私も、仕事が暇になったせいか、何かに追い立てられるような焦燥感が無くなり、在宅勤務中、とても深い良い睡眠を得られていることに気がつきました。週末も一切仕事のことは考えないので、ゆったりと過ごすことができます。

 

毎朝、目を覚ました時の爽快感。今日は仕事が終わったら何をしようか、夕飯は何を作ろうか、ワクワクしながら一日が始まります。就職して以来こんなにリラックスした穏やかな気持ちでいることはありませんでした。

 

もし会社から、「在宅勤務は終了、来週から通常勤務に戻れ」と指示が来たら、私も妻と同じように落ち込むことになるのでしょう。通勤電車に押し込められることや、スーツを着て出社しなければならないこと、不要不急の会議に出ることにもうんざりさせられるでしょうが、それよりも、今の充実した在宅生活が終わってしまうことに対していたたまれない気持ちを抱くことになりそうです。まだ在宅勤務終了が決まったわけでは無いのですが、考えただけで喉の奥に重い物が落ちていく気分になります。

 

時間に振り回されない生活

仕事が忙しい時ほど、「週末はあれをしなければ、これをしなければ」と、少ない時間を無駄にしないように算段を立てます。在宅勤務が決まった時、私も妻も空いた時間を無駄無く活用しようと計画を立てました。

 

仕事で忙殺された時間は、お金(給料)として自分に返ってくるにしても、後になって時間を買い戻すことは出来ません。だからこそ、その週、その月に失ってしまった自分の時間でやりたかったことを週末のひと時で取り戻そうとしていたのだと思います。

 

在宅生活の最初のうちは、買ったまま埃を被っていた本を読み漁り、見ないまま放っておいたDVDを鑑賞したりしてあっという間に夜が更けて行きました。失った時間を取り戻そうと言う思いが強かったのでしょう。ところが、やがてそうした行為を続けることが義務的な作業のように感じられ止めてしまいました。夜はあまり遅くならないうちに布団に入り、読みたい本は眠りにつくまでの時間に読み進めるようにしました。

 

これまで、ページを捲る手が止まらないと言った本もあり、つい遅くまで読書をしてしまったこともありますが、総じて在宅生活以前の夜更かしは鳴りを潜め、健康的な早寝早起きの生活パターンに落ち着きました。傍から見ると、せっかく時間が空いたのにもったいないと思われるかもしれません。しかし、時間に追われる感覚が消え失せ、自分の中から自然に湧き上がってきたのは、やりたいことはやりたい時にやればいいと言うゆったりとした心持ち、自分の時間を自分のために使っていると言う実感でした。これこそが望んでいた生活なのだと思いました。

 

贅沢に時間を使う

会社人間にとって、「合理化・効率化」は業務目標を作る時の常套句です。毎年、業務の無駄が無いかを探しては、少しでも能率を上げようと努力するのが良い会社員とされます。

 

在宅勤務を行うための業務効率化については別の記事で触れましたが、これまで事務局が必要だと言い張っていた会議の中には、不要不急のものが多く含まれていることが分かりました。業務の効率化を叫んでいた管理部門の仕事こそ、実は一番効率化の余地があったというのは、スパイスの利いた皮肉です。

lambamirstan.hatenablog.com

 

それに対して、個人の自由な時間は、合理化や効率化とは対極的な存在だと言うことに気がつきました。時間がもったいないとか、無駄の無いように、などと考える必要の無いもの。贅沢に使って良いものだと思いました。

 

在宅勤務で仕事の無駄を省けば、自分の時間を贅沢に使える。この“気づき”を捨てて、元の生活に戻る自信が私にはありません。