上司と部下のドライな関係

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宴会命男の屈辱

ちょうどこの季節、私の勤め先では6月から7月にかけての人事異動が公表されます。例年であれば送別会でカレンダーが埋まっていくのですが、今年はそんな雰囲気ではありません。会社としても、社外との宴会はもちろん、社員同士での飲み会も自粛するようにお達しが来ています。

 

今年もお世話になった先輩のうち何人かが異動になりますが、送別会や慰労会は、騒ぎが落ち着いた後、頃合いを見計らって行うしかないと思っていました。

 

しかし、それでは気が収まらないという者がいます。送別会や歓迎会に人一倍力を注ぐその男から先日電話がありました。退任予定の役員のために送別会を開きたい、本人の内諾も得ているとのこと。聞くと、すでに店も押さえ、フェイスシールドも購入済み、後は参加者を集めるだけと言う話です。

 

最近テレビで、新しい生活様式での飲み会の例として、フェイスシールドをつけて宴会を行っている様子を流していましたが、私はそれを悪い冗談だと思っていました。何が楽しくて、“お面”をつけてまで宴会を開かなければいけないのか。まさかそれを、真に受けて実行に移そうとしている人間がいるとは、開いた口が塞がりません。

 

送別会の幹事を買って出た男は私の三つ上の先輩です。私へのリクエストは、空席を埋めろというもの。“10名で店を予約したので、若手・中堅、そして女性社員も何人か集めろ”、 “飲み会の強要はパワハラなので、パワハラにならないようにうまくやれ”、という無茶なことを押しつけてきました。

 

その先輩には、時節柄、宴会を開くのは社令に背くことを伝え、どうしても大先輩の役員を慰労したいのであれば、私も含めて3人だけでこっそり飲み会を開いてはどうかと提案しましたが、怒鳴って電話を切られたきりその後の連絡がありません。

 

“宴会命”という人間にとっては、宴会が成立しない状況に我慢がならないのでしょう。

 

ウェットからドライへ

私が若手社員の頃は、飲み会も仕事の内と言う風潮がまかり通っていました。酔っぱらった上司や先輩の世話をするのは嫌でしたが、ためになる話を聞くこともできたりして、悪いことばかりではありませんでした。また、日中上司と言い合いになっても、一晩付き合えば“チャラ”。翌日は何事も無く仕事ができました。もっとも、いつまでも根に持つ上司や先輩もおりましたが、そのような例外を除き、酒の席というのは、仕事で生じた“しこり”を解きほぐす役割がありました。そう考えると、昔の上司・部下の間には、仕事上のつながりとは別に、ウェットな“義理”や“情”が存在していたのだと思います。

 

今私は部下を数名抱える身となりましたが、部下と飲みに行くことは滅多にありません。もちろん、新型コロナ騒動以前からの話です。宴会参加の強要がパワハラに該当することは今や常識ですが、それもあって、私から部下を飲みに誘うことはしません。部下のうち何人かは、私が実は酒好きであることを知っていて、たまに気を遣って誘ってくれることがあります。

 

部下との飲み会の時、私はどちらかと言うと聞き役に回ることの方が多いです。年寄りの説教を聞かされれば酒が不味くなるでしょうし、私自身、酒の席で上の人間から説教されるのが嫌で堪らなかったからです。話を良く聞くことと、相手の考えを否定しないと言うのが飲み会の時の私のスタイルです。

 

また、昔の飲み会では二次会は当たり前でしたが、“私の飲み会”は一次会でお開きにしています。部下から二次会に誘われることはありますが、二次会の足しに少しお金を渡して私は引き上げることにしています。

 

部下との間には、近過ぎず離れ過ぎず、適度な距離間を保つようにしています。先輩や同期からは、私の考え方をドライだと言われることもありますが、酒付き合いの良し悪しと部下を大切に思う気持ちは全くの別物です。

 

在宅勤務が続く中で、毎朝オンラインで部内の定例会を開いていますが、これは朝礼のようなもので各自1~2分で、その日の体調と担当業務の進捗を報告し合っています。懸案事項があったとしても、その場で細かな議論はしないので、せいぜい20分くらいで終わります。それ以外で、特定の部下と個別にオンラインミーティングをすることもあります。仕事のアドバイスがほとんどですが、部下の愚痴や悩みを聞いたりすることもあります。

 

ふと思い返すと、これまで部下と時間を気にせず話をしたことがありませんでした。会社ではそれぞれ予定があるため、相談と言っても限られた時間の中で無理やり結論を出すことがほとんどでした。

 

今や私も部下も自宅に居ながらにして話し合いができます。時間を気にせず、周囲の耳に注意を払う必要もありません。かえって、直接顔を合わせて話をするよりも率直な話ができているような気もします。

 

ひと昔前だと、部下の悩みを上司が聞く時は飲みに誘うのが常套手段でしたが、オンラインで相談に乗る方が、冷静に相手の話を聞くことができる気がします。酒の力を借りて雰囲気を和らげるような、“せこい”ことはせずに、部下の悩み事に真摯に向き合うことの方が誠実なのではと思います。