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老後の前のハッピーアワー

在宅勤務雑考 (2)

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外に出たい季節

在宅勤務の副産物として、私は生活にゆとりを感じるようになりました。私同様に“ゆとり生活”をエンジョイしている人もいれば、これを苦痛に感じている人もいるようです。家に引き籠ったまま、仕事とプライベートの両立を続けようとすると窮屈な気分になります。

 

外出自粛要請によって、大きな繁華街ではデパートなどの臨時休業で人出が途絶えましたが、その反動で沿線の商店街などはかえって客足が増えたのだとか。もちろん、私たちひとりひとりが、外出自粛に協力しなければならないことは言うまでもありませんが、特にこれからの良い季節、家でじっとしているのを苦痛に感じる人は増えて来るでしょう。

 

これを解決するには、他者との“濃厚接触”にならない範囲での外出を生活に取り入れることだと思います。私は、ストレス解消の手段として早朝散歩を取り入れています。今ではこの早朝散歩がとても待ち遠しいものとなりました。単に近所を往復1時間程度散歩するだけなのですが、近所とは言え、歩いてみるとまだ知らない脇道がたくさんあり、毎日新しいルートを探す楽しみがあります。在宅勤務が無ければ、おそらくこのような散歩に興味を持つこともありませんでした。

 

無能者は良く動く

会社の同僚で私と同年代の中には、家に居づらいのか、仕事が進まないストレスからか、居ても立ってもいられないという者がおります。どうするかというと、“とりあえず会社に行く”。会社からは不要な出社は控えるよう通達が出ているので、幹部社員であればなおのこと、会社の指示は遵守すべき立場にあります。それにも拘らず、会社に出てきてしまうというのはどうしたものでしょう。

 

在宅勤務していることをあたかも仕事をさぼっているように考える者もいます。「部下を怠けさせておくわけにはいかない」などと言う者もいます。しかし、その手の人間は、部下に仕事をやらせることが自分の仕事だと勘違いしているのです。

 

今我々に求められていることは、新型肺炎の感染拡大を防ぐことであり、そのための外出自粛のはず。それに、会社に顔を出してもやることはありません。仕掛中の案件で、海外の会社がパートナーになっているものもありますが、どこの国でも今は仕事どころではなく、自分や家族が第一と考えるのが普通です。

 

このような状況下で、先方の会社のカウンターパートにコンタクトできたとしても、仕事が捗るはずがありません。仕事の遅れは、コロナ騒動が沈静化した後に挽回するしかないのです。そんなことは考えなくても分かるはずなのですが、普段、部下に指図することが仕事だと勘違いしている人間に限って、非常事態に何をすべきかを見失ってしまい、「(先方の会社と)何とかしてコンタクトしろ」と無意味な指示を飛ばすことになります。会社が半ば機能不全になりかかっている最中に、無能者が動き回るほど、実務を担うもののやる気を殺ぐことになってしまいます。

 

若手・中堅は何を思う

在宅勤務では、既存の事業を維持することができていれば御の字だと思います。膝詰め談判を要するような交渉事など後回しで良いのです。交渉相手だってそんな場合ではありません。

 

新型肺炎の新たな感染者を増やさないため、また、自分や家族が罹患しないためには、何をすべきか。出社しても会社にはほとんど人はいませんので、事務所自体は“安全地帯”かもしれませんが、会社の行き帰りでの感染リスクはあります。今私たちができることは、極力外出を控える、他者との接触を避ける以外にありません。

 

私を含め、50代半ばに差し掛かった会社員は、もう終わりが見えています。一方で、これから会社を担っていく若手や中堅社員は今、何を思っているのか。病気に罹るかもしれないというリスクのみならず、これから予想される景気のさらなる悪化、最悪、働く場を失うことだってあり得ます。そのような不安を抱いているのではないでしょうか。現に私の部下も先行きの不安を口に出します。私自身、長い会社人生の中で、在宅勤務と言う経験は初めてです。誰だって、これから何が起こるか分からないのです。

 

在宅勤務開始以来、ビデオ会議システムを常時“オン”にすることは、部の若手社員からの要望を受けてのものでした。部員全員が参加を強いられるものではなく、賛同者が参加することになっていましたが、ふたを開けてみると、半数以上の部員が“オン”の状態で仕事をしているようです。

 

スピーカーからは、誰かの咳払いや独り言がときたま聞こえるだけです、仕事に何か役立っているかというと、そういう効果は無いのですが、静まり返った部屋で仕事をするよりは誰かの気配がそこにあるだけで、気分が落ち着くのだと思います。

 

さて、件の提案をした若手社員ですが、今年で入社6年目となります。自室に籠る生活が続き、いやでも自分や会社の将来のことを考え不安になってしまう、という悩みを打ち明けられました。

 

私たちの役割は、そのような若い世代の不安や不満に耳を傾けることです。彼ら・彼女らの欲する答えを持ち合わせていないかもしれませんが、それでも良いと私は考えます。まずは、若手・中堅の声を聞くことから始めたいと思います。