在宅勤務雑考 (3)

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在宅勤務評価中

ゴールデンウィークが終わると、私の勤め先では、決算発表を行い、そして6月の定時株主総会に向けて準備が進められていきます。この時期、会社にいると総会準備のピリピリした空気を肌で感じるものですが、在宅勤務では社内の雰囲気を共有することは出来ません。緊張感どころが、気が緩んでいる社員の方が多いのではと思います。

 

事務所内であれば、上司や同僚の目もあるので、それなりの緊張感を持って仕事にあたることになりますが、在宅勤務では、他人の目を気にする必要も無く自ずと気の緩みが出てしまいます。これは何も若手や中堅だけでなく、ほとんどの社員が同じだと思います。もちろん、私もです。

 

在宅勤務での気の緩みから大きなミスを犯してしまうと、労務管理の締め付け強化という悪い方向に事が動くことになります。したがって、部としてもつまらない失態を晒さないよう、最低限の緊張感を維持しなければなりません。

 

在宅勤務を行ったことによって部のパフォーマンスが下がったとなっては、「やはり在宅勤務は時期尚早だ」という上層部の判断を招きかねません。むしろ、在宅勤務でも、これまでと変わらない成果が得られること、それ以上に、期待する成果を“より効率良く”上げられることを示して、在宅勤務の本格的な導入を進めたいところです。

 

緊張感と心のゆとり

気の緩みはもってのほかですが、過度の緊張も仕事にとってマイナスになります。緊張とは、重要な仕事を任されてナーバスになるというだけで無く、過大なタスクを矢継ぎ早に指示され、気が抜けない状態が長く続くことも含まれます。在宅勤務の難しいところは、適度な緊張感とゆとり ‐ この二つのバランスを如何に取るかと言うところだと思います。

 

気の緩みが仕事のミスを誘発するのは当然ですが、逆に心の余裕が無いこともミスの原因となり得ます。

 

入社3年目の春のことです。私はある海外事業を行う子会社に出向していました。先輩社員が本社に復帰することとなり、代わりにその年に入社したばかりのUさんが配属となりました。私としては、優秀な先輩の後を引き継ぐことと、初めて自分の後輩ができたことから、変な気負いがありました。

 

子会社では固定費の削減が大きな課題だったので、人員も必要最小限に抑えられます。私の課は、課長の下に私とUさんのみ。本社のサポートはあるものの、これで総務と法務の仕事を回すのはかなり厳しい状況でした。頭の中は、「ミスはしてはならない」ということばかり。後輩のUさんには一日も早く仕事を覚えてもらいたいという期待もあり、私の仕事の教え方はとても厳しかったかもしれません。

 

当時の仕事場の様子を振り返ると、Uさんとしては右も左も分からない部署に放り込まれて、先輩社員からの簡単な説明と指示で仕事をこなさなければならなかったわけです。分からないことがあっても、いつもカリカリしている先輩社員に気軽に質問する雰囲気ではありませんでした。真面目な彼女は、目の前の仕事を自力で何とかしようと思ったのでしょう。

 

その頃の私は自分の仕事で手一杯。Uさんには指示した仕事が期限どおりにできたかどうかの確認だけで、彼女の悩みや気持ちなど全く意に介しませんでした。

 

ある日私は、Uさんのケアレスミスを彼女の言い分も聞かずに詰ったのです。直接の原因はよく覚えていません。あの当時の私は普通の心理状態では無かったのかもしれません。翌日から彼女は会社に来なくなりました。

 

私は彼女が出社しなくなったことなど気にも留めず、むしろ迷惑がっていたと思います。後輩社員が犯したミスの尻拭いをやらされて、やり場のない怒りしか感じていませんでした。その頃、私の上司と人事部との間で騒動が起こっていたことも気づきませんでした。

 

結局、私の上司は、新入社員の教育をまだ経験の浅い私に丸投げしていたとして、人事部から咎められました。私は人事部の先輩社員からこんこんと説教を受けました。当時まだ若く、“尖がっていた”私は先輩の言葉を素直に受け止めることができませんでした。半月ほどしてUさんは職場に戻ってきましたが、仕事は課長から直接受けることになったため、私とは接点が無くなり、会話も無くなりました。

 

しかし、その後、私自身が仕事や人間関係で様々な壁に突き当たりながら、先輩の言葉を心の底から理解できるようになると、Uさんに対して申し訳なかったという気持ちが自然に湧いてきました。

 

部下のミスを未然に防ぐのが上司の仕事。そのためには、部下の性格や力量を見極めてそれぞれの個性に合ったコンディション作りを行う。相談しやすい雰囲気が大切。至極当然のことばかりで、今振り返ってみると、私はそんな当たり前のことすらできなかったのかと、顔が赤くなります。Uさんは、結婚を機に30歳手前で会社を去って行きました。私は最後まで彼女に素直に謝ることができませんでした。

 

コンディション作りが上司の仕事

在宅勤務の場合、日頃部下とのコミュニケーションを疎かにしている上司は、部下に信頼を寄せることができません。「家でさぼっているのではないか」、「どこか出歩いているのではないか」と疑心暗鬼から、朝から晩まで指示を飛ばしまくって部下を仕事に縛りつけようとします。

 

私の上司からも、私以下部員全員に勤務日報をつけるよう指示がありました。しかし、オンラインでの部内会議も行っており、あえて日報をつける意味がありません。日報をつけるように言いながら、その上司を部内会議に誘っても顔を出すことはありません。結局何が目的なのか分からない仕事であるため、日報作成は聞き置くだけに留めています。たしかに、在宅勤務で時間的な余裕ができたことは事実ですが、空いている時間だからとは言え、部下に無意味な仕事をさせるわけには行きません。

 

現状、何か差し迫った案件があるわけでは無いので、部員には“良いチャンス”と言っています。何が、良いチャンスかと言えば、自分のペースで勉強できる絶好の機会ということです。

 

日頃仕事に追われていると、知識不足を実感するような局面に遭っても、勉強する余裕を作れません。その点、今は、必要な知識をインプットするには最高の環境が整っています。私からは、部下ひとりひとりに具体的な課題を与えることはしません。自分に何が足りないかは自分が一番良く知っているからです。何をすればいいか分からなければ、相談してくるように言っています。私の仕事はそのような部下と一緒にコンディション作りをすることです。