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良き隣人(2)

ハラスメント認定

職場での禁止行為を明確化することでハラスメントの件数は減るはずでした。ところが、完全にアウトなハラスメント事例は減少したものの、“ハラスメントになり得る”グレーゾーンの事例は社内での統計を開始した十数年前から微増しています。

 

思うに、ハラスメント行為と認定されるか否かは受け手の取り方による部分が大きく、同じ言動でも相手が不快に思えばハラスメントになってしまう可能性があります。全く同じ叱咤激励も、信頼を寄せている上司の言葉と険悪な関係にある上司の言葉では受け手の心情は異なるのです。

 

そして、そのような状況に戦々恐々としているのは部下を持つ上司です。セクハラやマタハラは、関連する話題に触れなければ済む話なので、まだ対応の仕方は簡単だと思います。

 

問題は、部下の指導や業務分担の決定など、監督責任者として行なう行為をどのように捉えるかです。会社にいて上司と部下が仕事の話に触れないわけにはいきません。そこにはパワハラのリスクが常に存在することになります。

 

勤務態度の悪い部下を上司が強く注意する。かつての職場ではよくある光景でしたが、今では注意の仕方を誤れば上司の側がパワハラと認定され人事部から厳重注意されることになります。上司が部下への配慮から別室で話し合いの場を持ったとしても、部下が上司の注意に威圧を感じたと言えば人事部が判断に乗り出すことになります。

 

注意できない上司

これまで部下の育成や指導は各部署に任されてきましたが、会社がハラスメント防止に力を入れるようになってからは、人事部の介入が散見されるようになりました。

 

中間管理職の悲しいところは自分も評価される対象であることです。パワハラ上司のレッテルを貼られ、部下に対する管理能力がないとみなされることを管理職は恐れています。

 

結果として、部下への注意が適正だったと人事部が判断しても、人によっては部下を注意することにこれまで以上に煩わしさを感じてしまい、問題ある社員に対して強く出られないこともあります。

 

働きやすい職場の創出が目的だったハラスメント防止策ですが、部下を適切に指導することに二の足を踏むような上司が増えれば組織は弱体化してしまいます。(続く)