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良き隣人(3)

職場崩壊?

人事部がハラスメント警察となり、一部の部下がクレーマー化しているのが今の職場だと言えます。

 

人事部はハラスメント研修の位置づけを「働きやすい職場の創出と維持」とし、職場では面倒なことを起こさず、良い人を演じるよう – そのようなことを明言はしていませんが – 社員に要求しています。

 

立場の弱い者を守る仕組みを作ることは必要ですが、上司が部下を注意すべき時に注意できない環境は、一部の社員を除き、働きやすさとは別のところに向かっているような気がしてなりません。

 

真面目に仕事に取り組んでいる社員から見て、手抜きをしている同僚が上司から何の注意もされず、その状態が放置されれば、やがて職場のモラルは低下するでしょう。学級崩壊ならぬ職場崩壊が現実のものになる日も遠くないのかもしれません。

 

良き隣人

ひと昔前に比べて、上司と部下、同僚同士の関係は良い意味でドライになった気がします。今は、仕事帰りに上司が部下を飲みに誘うことはなくなりました。私よりも上の世代の中には、上司と部下の良好な関係を築くのはアフターファイブの接し方次第、と職場の延長に酒場があると信じ切っている人間がいました。

 

実際には、お酒の力など借りなくても、良好な人間関係 - 仕事を円滑に進めるために必要な関係性を構築するのは難しいことではありません。

 

私は以前、仕事を円滑に進めるための良好な人間関係を維持するには、何か特別な能力を身に着ける必要はなく、ひたすら忍耐力を鍛えるしかないと勘違いしていました。

 

しかし、殊、仕事上の人間関係においては、忍耐力は邪魔で、むしろお互いに遠慮せずに意見を出し合える“風通しの良さ”こそ欠かせないものです。

 

そのためには、部下であれ同僚であれ、こちら側が日頃から相手を気にかけている姿勢を示すことが大切です。その意味で、“良い人” – 人事部が期待するのとは異なりますが – を演じることは必要なのだと考えます。

 

かつて、私が管理職だった頃、部下から私は口うるさい上司と思われていたことでしょう。言葉使いや文章作法、服装まで、私の部下に対する小言は尽きませんでした。反対に部下からは私の仕事の進め方を“激詰め”されることも珍しくありませんでした。

 

それでも、部署内に険悪なムードが漂わなかったのは、いつでも言いたいことを言い合える関係が出来上がっていたからだと思います。

 

冒頭の「職場崩壊」はやや大袈裟な表現かもしれませんでした。しかし、働きやすい職場を追求するあまり、会社が社員を“お客様扱い”してしまうのもどうかと思います。

 

職場での禁止行為を羅列するだけでなく、社員同士が良き隣人になるための方法を考える方が前向きな気がします。