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管理職のただ働き(2)

管理職のただ働き

私が管理職を降りる少し前のことです。幹部会で人事部長が全社の上半期の残業時間を発表しました。配布された資料から、ほとんどの部門の残業時間が減少傾向にあることは一目瞭然でしたが、ある管理職から文句がつきました。一般社員の残業時間が減ったことは事実だが、幹部社員にそのしわ寄せが来ていることもまた事実。下半期は管理職の労働時間も統計に含めるべき。その管理職自身がしわ寄せを被っていることは言わなくても分かりました。一般社員の残業時間が減ったのは管理職のただ働きのお陰なのです。

 

人手不足の中、部下の残業時間を減らすには、業務の効率化だけでは不十分で、上司が一部の実務を引き受けなければ、残業時間減の目標を達成することは困難でした。

 

どこの部署も似たようなもので、私の部署も例外ではありませんでした。一時期、部の残業がほとんどゼロになった矢先に、別の部署の仕事が割り振られたため、私や課長が休日出勤して何とか仕事を回している有様でした。

 

部下の残業時間を減らすために上司が残業するのでは、組織全体で考えると何も改善されていないのですが、管理職は残業手当がつかないため、時間外にどれだけ働こうと実態が分かりません。

 

件の管理職の要望は、会議に出席していたほとんど全ての管理職が賛同し、人事部長は不承不承ながら幹部社員の労働時間の実態を把握することを約束したのでした。

 

その後、前月の残業時間を翌月の幹部会で公表するようになったのですが、幹部社員の残業時間は私が想像していた以上のものでした。

 

理屈の上では、管理職は自分の裁量で労働時間を決めることが出来ます。一般社員のように一日の就業時間に縛られることなく、仕事が終われば早帰りすることも可能のはずなのですが、実際は、そうは行きません。ましてや、私の勤め先のように慢性的な人手不足の中、実務の一部を担いながら本来の管理職の仕事をこなすとなると、土日・祝日を潰さざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。

 

疲弊する管理職

管理職の負担は、在宅勤務制度が導入されても変わりません。役員のほとんどが出社している中、管理職が出社するのは暗黙の了解となっています。仮に、重要な会議がなく、在宅で仕事が出来る日でも出社すること自体が仕事になっています。

 

それは、コロナ対応の最中の、出社率を抑えようとしていた頃も同様で、部下全員が在宅勤務であっても部課長級は出社を続けていました。今の私の直属の上司は家族に小さいお子さんがおり、出社を続けることに不安を抱いていました。私は、不要不急の出社を控えることを勧めましたが、「そんな雰囲気ではない」と諦めていました。

 

私の部署の管理職は皆疲れています。慢性的な時間外労働や休日出勤を減らせないにしても、せめて週に一日でも二日でも在宅勤務が出来れば、少しは肉体的に楽になると思うのですが、真面目な人々ほど集団主義から抜け出すのは容易なことではないのでしょう。