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変化への対応 その攻防 (3)

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変化への抵抗

実力主義だ、男女平等だ、と叫んでみても、古い企業文化を持つ会社が一朝一夕に変われるわけがありません。変化を望む側と不変を望む側。不変を望む側が、変化を受け入れることによって自分たちの既得権益を失う可能性があれば、当然強く抵抗することとなります。

 

上位の集団が変化を望まなければ、たとえ表向きは変化を容認する素振りを見せても、新しいことを導入することを阻止したり骨抜きにしたりと、自分たちの安全圏を守ろうとするものです。

 

今の体制や方針の是非を都度振り返り見直すことをせずに、古い伝統は良き伝統と言う意識で凝り固まっている人間の目は、変化の波を見ることが出来ません。

 

私の勤め先でも、実務者レベルでは、“世間並の”会社に変わらなければ生き残れないと言う危機感を持っています。働き方の多様化に合わせた就労条件の改正や、年功制から成果主義への変更。様々な“改革”を行なおうとしてきました。

 

ところが、一例を挙げれば、幹部社員の登用に関しては、外部のコンサルタントを起用し、“公正な”登用試験を行なって見たものの、合格ラインを越える者がほとんどおらず、わずかな合格者がすべて女性社員だと分かった途端に、上からの圧力で採点基準を改めて合格者を水増ししたことがありました。

 

また、幹部社員になっても、その配属は人事権を握っている古い集団の胸三寸で決められるので、自分たちに都合の良い者たちを重用する傾向が続きます。

 

もっとも、“都合の良い者たちの重用”は男女の差と言うよりも、“閥”の間の攻防と言った方が良いのかもしれません。

 

現場が、如何に時代に取り残される危機感を強く覚えていても、変化への抵抗の壁を破ることが出来ずにいるのです。

 

止められない変化

一方で、働き方や生き方に対する価値観の変化は止められません。会社の中でも、昇格や昇給に価値を見出さない集団は、その数を増やしつつあります。組織の中で、より大きな権限を握りたいとか、より高い役職を目指したいと言った野心を抱くより、自分のプライベートを大切にし、仕事は生活するのに必要な収入が得られれば満足、と言う若手社員が思いのほか増えてきています。

 

リーダーシップの素養があると見込んでも、当の本人にその気が無ければ、管理職への登用は出来ません。社内で、管理職のポストを競い合うなど古い話になりつつあります。これから益々、余計な責任を負わされずに仕事とプライベートのバランスを上手く保ちたいと言う志向が、若い働き手の間で顕著になって行くように感じます。自分たちに都合の良い体制を維持したい上位の者たちの思惑をよそに、若い世代の価値観は大きく変化してきているのです。

 

私のような50代半ばの人間からしても、彼ら・彼女らの気持ちが理解出来る気がします。昔と違って、今の管理職はほとんどがプレイングマネージャーです。どこの部署も人手が十分では無く、部長以下全員が手を動かさなければ仕事が前に進みません。おまけに一般社員に残業をさせられない状況で、手が足りない分は管理職が残業や休日出勤をしてこなさなければなりません。

 

そんな上役の哀れな姿を目にすれば、誰も自分たちがそうなりたいとは思わないでしょう、給料が上がろうと、権限が大きくなろうと、自分の自由な時間が削られれば、仕事をこなすために日々生きているようなものになってしまいます。そう考えると、今の管理職は – 少なくとも私の勤め先では - 決して割の良いポジションではありません。

 

かつての私も含め、残業や休日出勤に耐えられる(?)管理職は、自分たちが若かりし頃に、悪い意味で「鍛えられた世代」です。そのため、抵抗感を覚えつつも自分の時間を削って仕事をすることが出来るのだと思います。

 

会社の方針もあり、今、ほとんどの一般社員は定時には退社出来るようになりましたが、彼ら・彼女らが管理職となった時、恒常的な残業や休日出勤に耐えられるでしょうか。私はそうは思いません。

 

ついこの前まで、ほぼ毎日在宅勤務が許されていた中でも、管理職の多くはほとんど毎日出社していました。役員が出社しているのに自分たちが出社しないわけには行かない – だたそれだけの理由で会社に通い続けている管理職は少なくありません。上役のそのような姿を見て、自分もそうなりたいと願う若手社員がいるでしょうか。私はそうは思いません。

 

活躍の場での男女の機会均等、働き方改革。会社は表向き、時代の変化に則した職場を目指そうとしていますが、その実は、古い体質を新しい仮面の下に隠し続けようとしています。

 

そんなことが永遠に続けられるわけは無く、いずれ、そう遠くない将来、綻びを隠すことが出来ない事態が訪れることでしょう。

 

変化を受け入れられない者は、生き物であれ会社であれ、やがては淘汰される運命にあるのだと思います。

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